インタビューガイド

インタビューガイドとは、定性調査のインタビューで何をどの順に聞くか、その質問の流れと狙いを書いた進行台本のことです。

インタビューガイドを具体例で理解する

新しいアプリの解約理由を知りたくて、利用者 6 人に 1 人 45 分のデプスインタビューをするとする。

このとき、いきなり「なぜ解約したのですか」とは聞かない。まず大項目を並べる。「ふだんの使い方」「不満を感じた場面」「解約を決めた瞬間」「いま使っている代わりの手段」。そのうえで、各項目の下に具体的な質問をぶら下げる。

たとえば「不満を感じた場面」の下なら、「最後に使ったのはいつ頃ですか」「そのとき何をしようとしていましたか」と、答えやすい事実から心情へと降りていく。

この一枚が、インタビューガイドである。

インタビューガイドの仕組み

ガイドはふつう、導入・本題・深掘り・クロージングの順で組む。

導入では目的と所要時間を伝え、答えやすい質問で場をほぐす。本題は大項目に沿って進め、引っかかる言葉があれば「それはどういうことですか」と深掘りする。最後に言い残しを拾う。

質問には、自由に語ってもらうオープン質問(「使ってみてどう感じましたか」)と、はい・いいえや選択肢で答えるクローズド質問(「毎日使っていましたか」)がある。語りを引き出すのは前者で、事実を確定させたいときに後者を挟む。

どこまで作り込むか、どう並べるか

ガイドの密度は、調査の型で変える。質問も順番も固定する構造化、大項目だけ決めて深掘りは現場で判断する半構造化、テーマだけ持って自由に話す非構造化。定性調査で多いのは半構造化で、狙いは構造と柔軟さの両立にある。

順序は、一般から具体へ、答えやすいものから降りていくのが基本だ。重い質問を冒頭に置くと、相手は身構えて当たり障りのない答えに逃げる。逆に、前の質問が次の答えを引っ張ることもある。先に「不満」を語らせると、その後の評価まで不満寄りに揺れる。

だからガイドは、読み上げる台本ではない。流れの地図である。先に答えた質問は飛ばし、面白い脇道には入る。全項目の消化ではなく、狙った領域を一通り通ることがゴールだ。これは数値を測る定量調査と違い、定性調査が意味の発見を目的にするからだ。

インタビューガイドで気をつけること

ガイドに書く質問の文面は、後の解釈をゆがめない言い方を選んでおく。

たとえば「機能と価格はどう思いましたか」のように二つを一度に聞くダブルバーレル質問は、片方しか答えてもらえない。ガイドの段階で「機能」と「価格」に割っておく。

ただ、文面を整えても防ぎきれないものがある。誘導質問だ。「やはり使いにくかったですよね」と期待する答えを先に見せる聞き方は、多くの場合、その場の相づちや言い換えから出てくる。こんな一文を最初からガイドに書く人はまずいない。沈黙に耐えかねて補ったとき、つい滑り出る。だからこれは、台本を直せば消える問題ではなく、聞く側が気をつけ続けるしかない。

逆に作り込みすぎる弊害もある。台本に縛られると、相手がふと漏らした言葉、つまり最も価値のある発見を、次の質問へ急ぐあまり取り逃がす。

インタビューガイドは、聞くための余白を確保する道具である

ガイドの本当の機能は、質問を並べることではない。

聞き漏らしを防ぐために大項目を立て、相手が語り出したら乗れるよう脱線の余地を残し、いつ何を聞くかという順序に責任を持つ。どれも、本番で相手の話に集中するための準備だ。一枚にまとめておくから、頭は質問の管理ではなく、目の前の人へ向く。

だからガイドを書くとき見るべきは、質問が網羅されているかだけではない。その順序で相手が無理なく語れるか、自分が台本から目を上げて聞けるかも含む。

完璧な台本を作り込むより、外していい一枚を持って、相手の話に乗れる状態でいること。インタビューガイドとは、聞き逃さないための地図であり、同時に、その地図を手放して相手に耳を傾けるための備えだ。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。