定量調査

定量調査とは、選択式のアンケートや行動ログのように数値で表せるデータを多くの対象者から集め、割合や平均といった数字で市場や集団の傾向を推計する調査手法です。

8 人の「おいしい」と、1,000 人の 34%

新しい冷凍餃子の試食会で、会議室の 8 人全員が「おいしい」と言ってくれた。手応えはある。ただ、この 8 人の熱量は、全国のスーパーでどれくらいの人が手に取るかを教えてくれない。

そこで 1,000 人にコンセプトを見せ、「買いたい」と答えた人を数える。全体では 34%、20 代に限ると 52%。「若い世帯の多い売場から並べる」という判断が、ここで初めて熱量ではなく数字で支えられる。

仕組みの核心は、回答してくれた標本(サンプル)の数字から、その背後にいる母集団——本当に知りたい集団全体——の傾向を推計することにある。

定性調査との使い分け

分かれ目は、問いの形だ。「どれくらいいるか」「どちらが多いか」「前回から増えたか」——量や差を測りたいなら定量調査。「なぜ選ばれないのか」「どんな場面で使われているのか」——理由や文脈を知りたいなら定性調査が向く。

もう一つ、手前に実務的な基準がある。設問の選択肢を自分で書き切れるか、だ。書けないうちに定量をかけると、返ってくるのは設計者の思い込みの範囲内の数字だけになる。そのときは定性で仮説を作ってから、定量で検証する。逆に、数字に出た差の理由は、定量の後の定性で掘る。この往復は Creswell と Plano Clark(2017)がミックスメソッドの基本形として整理している。

設計で決めること、分析で気をつけること

設計段階で決めるのは、対象者の条件、サンプルサイズ、設問と選択肢の三つ。アンケートは配信した瞬間に直せなくなるから、ここが勝負どころになる。

そのとき、分析を先取りしておきたい。「20 代と 50 代を比べたい」なら、クロス集計で分けたあとも各グループに十分な人数が残るように回収数を決める。比べたい軸を決めずに集めた 1,000 件は、分けた瞬間に足りなくなる。

定量調査でわからないこと

数字は「どれくらい」を測るが、「なぜ」には答えない。34% と 52% の差が見つかっても、その理由は選択肢の外側にある。また、標本から推計した値は母集団の値そのものではなく、標本誤差の幅を持つ。数ポイントの差だけを根拠に言い切らないこと。

数字は、配信ボタンを押す前に決まっている

定量調査というと、集計や分析といった後半の工程を想像しやすい。ただ、結果の質を左右するのは、誰に何をどう聞くかを決める前半の 30 分だと思う。

次に調査を発注するとき、見積もりの回収数の欄より先に、設問の選択肢の一行目を見てほしい。そこに書かれていない答えは、どれだけ集計しても出てこない。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。