コンセプトテストの設計手順で新商品の受容を見極める

目次

新商品会議に、コンセプトテストのレポートが配られます。表紙に大きく「食べてみたい 62%」。企画担当が言います。「6 割が食べたいと言っている、発売でいきましょう」。

読み終えるころには、その 1 つの数字だけで GO を決めずに済みます。購入意向に、買う・買わない理由、払ってよい価格、既存品との比較を重ね、受容を絶対値ではなく相対順位とセグメントで読むコンセプトテストを、自分で設計・発注・検収できるようになります。

例に使うのは、冷凍食品メーカーの新商品「冷凍パスタ」です。使うデータは教材用に作った架空のもので、実在する商品や市場の結果ではありません。先に結論を 1 つ。コンセプトテストの数字は「買いたい気持ち」であって「売れる証明」ではありません。だから、どの層が・何と比べて・いくらなら選ぶかで読みます。

受容は購入意向だけでは測れない

コンセプトテストとは、商品をまだ作らずに、言葉や絵で示した企画(コンセプト)に対する買い手の反応を測る調査です。ここでいちばん多い事故は、「買いたいですか」への答えだけを受容とみなし、その割合の高さで GO を決めることです。

割合が高く出やすいのには理由があります。調査回答の認知過程を扱った研究では、人は実際に財布を開く場面ではなく仮想の場面を問われると前向きに答えやすく、また社会的に望ましい方向へ寄せやすいことが知られています(Tourangeau ら)。さらに、購入意向と実際の購買のあいだにはずれがあり、意向は行動より高めに出ること、その一致度は商品カテゴリや聞き方で変わることが、査読研究でも繰り返し示されています(Morwitz ら, 2007)。つまり冒頭の 62% は、売れる数ではなく「聞かれ方に対して前向きに答えた人の数」です。

だから受容を、1 つの数字ではなく操作的に定義し直します。操作的定義とは、その言葉を「何が測れたら達成とみなすか」という測定の形に置き換えることです。ここでは受容を、次の 4 つがそろった状態と定義します。

  • 買いたいと答える人が一定割合いる
    • 購入意向そのもの
  • 買いたい理由が、その商品が狙った価値と一致している
    • 手軽さで売るのに「安いから」しか刺さっていないなら危うい
  • 想定する価格でも買いたい人が残る
    • 価格を伏せた意向は甘い
  • いま食べているものより選ばれる
    • 既存の代わりに選ばれて初めて売上になる

受容とは、狙った理由で・想定価格で・既存品の代わりに選ばれることであって、意向割合の高さそのものではありません。この定義から、次に組む設問が決まります。

コンセプトは言葉と価格と場面で示す

購入意向を聞く前に、何を提示するかで数字は動きます。提示物が曖昧だと、回答者はそれぞれ勝手に理想の商品を思い浮かべ、意向は実態より高く出ます。反対に、価格や食べる場面まで書き込むほど、答えは「その条件でも欲しいか」に近づきます。

提示物には、次の 3 つを必ず入れます。冷凍パスタの例で書き下すと、こうなります。

  • 言語(何が新しいのか)
    • 「レンジで 5 分、生パスタ食感の冷凍ボロネーゼ」
  • 価格(いくらか)
    • 「1 食 450 円」
  • 利用シーン(いつ・誰が・何の代わりに食べるのか)
    • 「平日の遅い夜、外食より手軽でコンビニより本格的な一皿として」

このうち抜けやすいのは価格です。価格を出さずに測った意向は、無料の理想像への反応に近く、発売判断には使えません。提示コンセプトの文言そのものが誘導的だと、受容ではなく文章のうまさを測ることになります。中立で具体的な書き方の原則は、設問文の作り方の記事に譲りますが、コンセプト文にも同じ原則が効きます。「待望の」「ついに」のような煽り語は外します。

設問は意向と理由と価格と相対で組む

提示物を見せたあと、受容の 4 要素をそのまま設問に落とします。この冷凍パスタで実際に組んだ設問構成が表 1 です。以降の集計で出てくる設問 ID は、この表を指します。

設問 ID内容
SC1冷凍食品の購入頻度(スクリーニング)単一選択
Q1コンセプト提示後の購入意向(5 件法)順序
Q2買いたい理由(複数選択・Q1 が上位のみ)複数選択
Q3買いたくない理由(複数選択・Q1 が下位のみ)複数選択
Q4受け入れられる価格帯順序
Q5既存の冷凍パスタの利用頻度順序
Q6既存品と比べた相対評価(5 件法)順序
F1世帯構成単一選択

購入意向の Q1 は、リッカート尺度(段階に順序のある評価尺度)の 5 件法で聞きます。「ぜひ買いたい」から「まったく買いたくない」までの 5 段階です。2 択の「買いたい/買いたくない」にしないのは、迷いの量が消えて、どちらとも言えない層が強制的に二分されるからです。尺度を段階で測る意義は尺度開発の教科書で古くから整理されています(Likert 1932 が原典、DeVellis が現代の標準)。

理由は複数選択(MA、あてはまるものをすべて選ぶ形式)で、買いたい人と買いたくない人で別々に聞きます。買った人が何に惹かれ、買わない人が何で降りたかは、割合と同じくらい発売判断を左右します。価格の Q4 は「いくらまでなら出すか」の帯で聞き、想定価格の 450 円が許容の中に入るかを見ます。相対評価の Q6 は「いま食べているものと比べてどうか」で、既存品の代わりに選ばれるかを直接聞きます。

設問はこれで足ります。受容の判断に効かない設問(好きな色、認知度など)を足すほど、回答者は疲れ、後半の答えが荒れます。設問数と回答の質のトレードオフは、姉妹記事の質問数の目安にまとめました。

対象は冷凍食品を買う人に絞る

誰に見せるかを間違えると、その先の設問がどれだけ丁寧でも数字は濁ります。冷凍食品をそもそも買わない人にコンセプトを見せて「買いたくない」と言われても、それは商品の問題ではなく人選の問題です。

だから冒頭にスクリーニング(対象者を絞り込む前置きの設問)を置きます。SC1 で冷凍食品の購入頻度を聞き、「買わない」と答えた人はそこで調査を終え、分析から外します。今回の教材データでは、回収した 322 人のうち 38 人がこれにあたり、分析ベースは 284 人になりました。

  • 総回収: 322 人
  • 除外: SC1 で「買わない」の 38 人
  • 分析ベース: n = 284
    • 以降の割合の分母は、断りがなければここが出発点

絞りすぎにも注意が要ります。「週に 2 回以上買うヘビーユーザーだけ」に狭めると、意向は跳ね上がりますが、それは市場全体ではなく最も甘い層の数字です。カテゴリを使う人全体を入れ、あとでセグメントに割って読むほうが、判断を誤りません。

判断は絶対値でなく相対とセグメントで読む

受容の判断で、ここがいちばん危ういところです。分析ベースで購入意向 Top2 を出すと 41.2% でした。Top2 ボックスとは、5 段階の上位 2 つ(ここでは「ぜひ買いたい」+「やや買いたい」)を合算した割合のことです。数え方の条件はこうです。

  • 使用設問: Q1
  • リコード: 4〜5 を Top2、1〜3 を非 Top2
  • フィルタ: SC1 で非利用を除外(分析ベース 284)
  • 分母: 分析ベース全体。割合は小数第 1 位、度数は整数のため丸めていません
表 2 購入意向の分布度数割合
ぜひ買いたい3110.9%
やや買いたい8630.3%
どちらともいえない10436.6%
あまり買いたくない4415.5%
まったく買いたくない196.7%
Top2(上位 2 つ)11741.2%

購入意向の Top2 を受容の目安に使うのは、統計的な必然ではなく調査実務の慣行です。共通のものさしとして便利ですが、業種や商品で当たり前の水準は違うので、絶対の合格ラインにはしません。むしろ 41.2% という数字そのものより、この分布でいちばん大きいのが「どちらともいえない」の 36.6% だという事実を見ます。過半が態度を決めきれていません。

そこで絶対値を離れ、2 つの軸で読み直します。1 つめは既存品との相対評価(Q6)です。「この新商品のほうが良い」という上位 2 つは 37.3% で、購入意向の Top2 より低い。既存の冷凍パスタや自炊を上回れていない人のほうが多いということです。

表 3 既存品との相対評価度数割合
新商品のほうがずっと良い258.8%
新商品のほうがやや良い8128.5%
どちらともいえない10336.3%
既存のほうがやや良い5017.6%
既存のほうがずっと良い258.8%

2 つめはセグメントです。世帯構成(F1)で割ると、絶対値の陰に隠れていた差が出ます。集計条件は、Q1 の Top2 を F1 の各区分で数え、分母は各区分の人数、です。

表 4 世帯構成別の購入意向 Top2nTop2 率
単身8752.9%
子どものいる世帯10933.9%

同じ商品なのに、単身は 52.9%、子どものいる世帯は 33.9% で、19 ポイント開きます。全体の 41.2% は、この 2 つを平らにならした数字にすぎません。受容は全体の 1 つの割合ではなく、どの層で・何と比べて成り立つかで読みます。単身にとっては手軽な一皿でも、家族の食卓では量や価格が引っかかる、という仮説がここで立ちます。

理由と価格で受容の中身を確かめる

割合の次に、なぜ買うか・なぜ降りるか、そして想定価格に耐えるかを見ます。ここが弱いと、意向が高くても発売後に崩れます。

買いたい理由(Q2、分母は Top2 の 117 人)と、買いたくない理由(Q3、分母は下位 2 つの 63 人)を並べたのが表 5 です。複数選択なので割合は足して 100% を超えます。

表 5 買う理由・買わない理由(上位)選んだ割合
買いたい: レンジ調理で手軽64.1%
買いたい: 生パスタ食感に惹かれた58.1%
買いたい: 価格が手ごろ47.9%
買いたい: 夜遅くの食事に合う45.3%
買いたくない: 価格が高い61.9%
買いたくない: 味に期待できない55.6%
買いたくない: 量が物足りない42.9%

買いたい側では、狙った価値である「手軽さ」と「生パスタ食感」が上位に来ており、コンセプトの芯は届いています。一方で買いたくない側の最上位は「価格が高い」。同じ価格が、買う人には手ごろ、買わない人には高い、と割れています。この割れは価格帯の設問(Q4)で裏が取れます。

  • 使用設問: Q4(受け入れ価格帯)
  • 想定価格 450 円が入るのは「400〜499 円」以上を選んだ人
  • フィルタ: 分析ベース 284。分母は分析ベース全体

400 円以上を許容したのは 53.9% でした。裏を返すと、想定価格 450 円のままでは 46.1% が価格で降りる計算です。手軽さと食感で芯は取れているのに、価格が半分近くを削っている。ここまで来ると、GO か見送りかの前に「誰に・いくらで出すか」を動かす余地が見えてきます。

業者や AI の「受容度」は分母と聞き方を問う

外注や生成 AI に設問と集計を任せると、レポートに「受容度 78%」のような 1 つの大きな数字が返ってくることがあります。数字が大きいほど検収は甘くなりがちですが、大きい数字ほど分母と聞き方を疑います。冒頭の「食べてみたい 62%」も、そのまま会議に出す前に確かめる対象です。

戻ってきた成果物には、次の質問をそのまま返せます。

  1. その割合の分母は何人で、どう絞ったのか
    • スクリーニングで非利用者を外したか、外さず全員を分母にしていないか
  2. 何を「受容」と数えたのか
    • 購入意向か、単なる興味・関心か。「食べてみたい」は関心であって購入意向ではない
  3. Top2 か Top3 か
    • 「どちらともいえない」を前向き側に足していないか
  4. 価格を提示したうえでの意向か
    • 価格を伏せた意向は高めに出る
  5. 既存品との比較を聞いたか
    • 代わりに選ばれるかを見ずに受容とは言えない
  6. セグメント別の数字はあるか
    • 全体 1 本の割合しかないなら、層ごとの差が隠れている

生成 AI に集計させた場合は、これに加えて、示された数字が本当にローデータから出るかを 1 つ再計算して照合します。AI は存在しない集計をもっともらしく書くことがあるためです。設問ドラフト自体を AI に作らせる手順と、その検収は別の記事の領分です。有意差がついたかどうかの判定は、有意差検定を Excel で確かめる記事に譲ります。ここで問うのは、有意より前の「何を・誰に・どう聞いて出した数字か」です。

コンセプトの数字は実売を保証しない

最後に、この設計でも言えないことを線引きします。コンセプトテストが測るのは、提示物に対する意向であって、店頭で実際に手が伸びるかではありません。仮想の場面で前向きに答えた人が、棚の前で別の商品を選ぶことは普通に起きます。今回の教材データも架空のもので、41.2% や 52.9% という水準そのものに実市場の意味はありません。持ち帰れるのは、設問の組み方と数字の読み方です。

提示バイアスも残ります。文言・価格・シーンの見せ方を変えれば数字は動くので、1 つの提示で出た受容は、その提示に対する受容です。実売に近づけたいなら、複数コンセプトを相対比較する、価格を数段階振る、テスト販売で実際の購買を見る、といった次の手に渡します。

そのうえで、冒頭の会議に戻ります。全体で見れば、わたしはこの 1 本での全方位の GO は勧めません。上司にはこう返します。「購入意向は 4 割ですが、想定価格 450 円で半数近くが降り、既存を上回るという回答は 4 割未満です。この価格と訴求のままの全国発売は見送り、単身層に絞るか価格を見直しての再設計を提案します」。

一方で、見送りは全否定ではありません。層を絞れば別の答えになります。「単身層に限れば購入意向は 5 割超と、全体より一段高く出ています。理由・既存品との比較・価格の許容も、この層だけを取り出して同じ設問で確かめれば判断材料になります。まずこの層に向けて小さく出し、実際の売れ方を見てから広げる、という進め方も選べます」。同じデータから、全方位なら見送り、単身に絞るなら別の判断もありうる、と分けて言えること。これがコンセプトテストを絶対値ではなく相対とセグメントで読むということです。次の一歩は、複数コンセプトを同じ設計で並べて相対比較にかけることです。

参考文献

  • Roger Tourangeau, Lance J. Rips & Kenneth Rasinski (2000). The Psychology of Survey Response. Cambridge University Press. DOI:10.1017/CBO9780511819322
  • Vicki G. Morwitz, Joel H. Steckel & Alok Gupta (2007). “When do purchase intentions predict sales?” International Journal of Forecasting 23(3): 347–364. DOI:10.1016/j.ijforecast.2007.05.015
  • Rensis Likert (1932). “A Technique for the Measurement of Attitudes.” Archives of Psychology 140: 1–55.
  • Robert F. DeVellis & Carolyn T. Thorpe (2021). Scale Development: Theory and Applications, 5th ed. SAGE. ISBN 9781544379340
この記事の著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。