スクリーニング調査

スクリーニング調査とは、本調査の前に「誰に聞くか」を条件で絞り込むための事前調査です。聞きたい相手の条件を質問で確かめ、当てはまる人だけを本調査へ通す。実務では「SC」「SC 調査」と略して呼ばれることも多い。

スクリーニング調査を具体例で理解する

たとえば、新しい子ども向け教材についてアンケートを取りたいとする。

街で 1,000 人に声をかけても、その全員が答えてくれる相手とは限らない。本当に意見が欲しいのは「未就学児の子どもがいて、家庭で学習教材を使っている保護者」だ。

そこで本題に入る前に、短い質問を挟む。「同居している子どもの年齢は」「家庭学習の教材を使っているか」。ここで条件に当てはまった人だけが、本調査の長い設問に進む。

この、本題の手前で相手を仕分けるひと手間が、スクリーニング調査である。

スクリーニング調査の仕組み

やっていることは、突き詰めれば 3 ステップだ。

まず、聞きたい相手の条件を決めて、それを判定できる質問に翻訳する。次に、回答が条件に当てはまるかどうかを一人ずつ判定する。最後に、通過した人だけを本調査へ送る。

ここで一つだけ覚えておきたい数字がある。出現率(インシデンス率)だ。これは、声をかけた人のうち条件を満たした人の割合を指す。たとえば 1,000 人に聞いて 50 人が通過すれば、出現率は 5% になる。

業界団体 ESOMAR の用語集も、出現率を「調査で接触した回答者のうち、その調査の対象として適格な人の割合」と定義している。出現率が低い相手ほど見つけるのが難しく、必要な人数を集めるための時間も費用も膨らむ。条件を決めた瞬間に、調査の現実的な重さがほぼ決まる、と言ってもいい。

スクリーニング調査は何を決めるのか

発注側が向き合うのは、結局「条件をどう設計するか」という一点に尽きる。

  • 条件が緩すぎると、対象でない人まで本調査に紛れ込み、結果がぼやける
  • 条件が厳しすぎると、該当者が出現せず、人数が集まらないまま費用だけがかさむ
  • 「持ち家かどうか」のような二値で切るのか、「月の利用回数」のような量で切るのかでも、絞り込みの精度は変わる

この調査はそれ自体が答えを出すものではない。本調査の母集団を形づくる、前段の設計である。だからこそ、定量調査でも定性調査でも、本調査の質はスクリーニングの条件設計で半分決まる。

スクリーニング調査でわからないこと

最も注意すべきなのは、絞り込みの条件そのものが対象集団を歪めうる、という点だ。

条件を変えれば、通過する人の顔ぶれは変わる。集まった結果は「世の中の実態」ではなく、「あなたが設定した条件を満たした人たち」の姿でしかない。本調査の数字がきれいに見えても、それは条件の作り方が決めた像だ。

もう一つは、回答者が通過したくて事実と違う回答をすることだ。謝礼のある調査では、対象に当てはまろうとして条件質問に都合よく答える人が出る。条件を「はい / いいえ」で素直に問うほど、その隙は大きくなる。

通過した人数を数えれば出現率はわかる。けれど、その人たちが本当に条件どおりの相手かどうかまでは、数字は教えてくれない。

スクリーニング調査は、結果の前に立っている

調査というと、集まった数字をどう読むかに目が行きやすい。

ただ、本当の分岐点は、もっと手前にある。誰を通し、誰を通さないかを決めた瞬間に、その後に出てくる数字の輪郭はもう決まっている。

だから、本調査の数字が確かかどうかは、誰を通すかを決めた手前で決まる。

何を見たいのかを自分の言葉で選べたときだけ、その数字は信じるに足るものになる。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。