操作的定義

操作的定義とは、「満足」や「愛着」のように直接は測れない抽象的な概念を、観測・測定できる具体的な手順や指標に置き換えて定義することです。

操作的定義は「満足度を測ろう」と決めた瞬間に始まっている

新サービスの調査で、「顧客満足を測りたい」と言われたとする。

ここで一度、立ち止まりたい。満足という気持ちは、そのままでは測れない。物差しを当てられないし、何グラムとも数えられない。だから実際には、こう決めるしかない。

「満足度は、『この商品に満足しましたか』という設問の 5 段階評価で測る」

この一文が、操作的定義だ。手で触れない「満足」を、回答できる手順に翻訳している。同じ満足を「また買いたいか(再購入意向)」で測ると決めれば、それも一つの操作的定義だが、別物だ。

つまり、何を測るかを決めた瞬間に、あなたは「満足とは何か」をこの調査の中で定義し直している。

抽象概念を、測れる手順に翻訳する

測れない抽象概念のことを、調査の世界では構成概念(construct)と呼ぶ。満足、信頼、ブランドへの愛着、エンゲージメント——どれも頭の中にはあるのに、直接は観測できないものだ。

操作的定義は、その構成概念と、実際に集まる数字との間に橋を架ける作業にあたる。考え方はシンプルで、「この概念が高い人は、観測できる場面でこう振る舞う・こう答えるはずだ」と決め、その指標を測定の手順として書き下す。

もとをたどると、物理学者ブリッジマンが 1927 年の著書で唱えた操作主義(operationism)にいきつく。概念の意味は、それを確かめる操作で決まる、という発想だ。のちに心理学や社会調査がこれを取り込み、目に見えない心の状態を、測定の手続きとして定義する標準的な作法になった。

操作的定義をどう判断に使うか

操作的定義は、調査を始める前の「何を測っているのか」を確定させる装置として効く。

たとえば「ブランドへの愛着」を測るとき、それを単一回答の設問に落とすのか、複数の質問を束ねたリッカート尺度で測るのか。この選択そのものが、愛着の定義を決めている。だから設計の段で、構成概念をどの指標に翻訳したのかを言葉にして残しておきたい。後で結果を解釈する人が、「この数字は何を指すのか」を取り違えずに済む。

そして、同じ概念でも操作的定義が違えば、結果は変わりうる。「満足度の設問」で測った満足と、「再購入意向」で測った満足は、別の数字になることがある。調査どうしを比べるときは、点数の高低より先に、互いの操作的定義がそろっているかを確かめる。

操作的定義でつまずくところ

最大の落とし穴は、指標を概念そのものと取り違えることだ。

「満足度=あの設問の点数」だと思い込んだ瞬間、点数が満足のすべてになってしまう。これは実体化(reification)と呼ばれる読み違いで、便宜的に決めた一つの測り方を、概念そのものにすり替えてしまう。本当は設問が拾えていない満足のかたちが、いくらでもあるはずなのに。

ここに関わるのが妥当性(construct validity)、つまり「その指標は、測りたい構成概念をちゃんと測れているか」という問いだ。指標と概念の間には、つねにズレがありうる。設問の点数が上がったとき、それは満足が高まったのか、それとも質問の言い回しに反応しただけなのか。操作的定義は測定を可能にするが、測ったものが概念と一致している保証まではくれない。

操作的定義とは、測れないものを測るための約束である

調査では、数字が出ると安心してしまう。平均が動けば、何かが変わった気になる。

でも、その数字はもともと、誰かが「満足とはこう測る」と決めた約束の上に立っている。約束が変われば、数字の意味も変わる。

だから設計のときに問うべきは、「何点だったか」ではない。

この設問は、本当に測りたいあの気持ちを、どこまで掬えているのか。

操作的定義が働くのは、その約束を書き留めて、結果を読むたびに約束のほうへ立ち返るときだけだ。約束を忘れた瞬間、点数はいつのまにか概念そのものの顔をして歩き出す。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。