複数回答(MA)

複数回答(MA)とは、用意した選択肢の中から、当てはまるものを回答者にいくつでも選んでもらう回答形式です。multiple answer や multiple response とも呼ばれ、画面ではチェックボックスで「あてはまるものをすべて」と問う形になります。

複数回答を具体例で理解する

新しいアプリの調査で、こう聞いたとする。

「ふだん使う動画サービスを、あてはまるものすべてお選びください」

選択肢には、A 社、B 社、C 社……とサービス名が並ぶ。1 人で 1 つしか選べない単一回答と違い、ある人は 2 つ、別の人は 5 つと、複数のマスにチェックを入れていく。

これが複数回答である。「どれか一つ」ではなく「持っているものを全部」を集めたいときに使う。利用サービス、知っているブランド、買ったカテゴリ。一人の中に複数あって当たり前のものを拾う形式だ。

複数回答の仕組み

複数回答には、見た目が似た二つのやり方がある。

一つは、選択肢を並べて「あてはまるものをすべて選ぶ」形式(check-all-that-apply)。チェックボックスを入れていく、おなじみのあれだ。

もう一つは、同じ項目を一つずつ「A 社は使っている? 使っていない?」とはい / いいえで聞いていく形式(forced-choice)。一見まわりくどいが、回答者は項目を一つずつ判断することになる。

集計は単一回答と別物になる。1 人が複数選ぶので、各選択肢の選択率は「その項目を選んだ人 ÷ 回答者数」で出す。分母は回答者の数だ。だから選択率を全部足すと、100% を超える。

どちらで聞くかが、数字を変える

「すべて選ぶ」と「一つずつ はい / いいえ」。同じことを聞いているようで、結果は揃わない。

ウェブ調査で 16 通りの比較を行った研究では、一つずつ はい / いいえ で聞く形式のほうが、選ばれる項目数が多く、回答にかかる時間も長かった(Smyth, Dillman, Christian & Stern, 2006)。長くかかったのは、回答者が項目を一つずつ吟味したから。逆に「すべて選ぶ」形式では、上から見て十分そうなところで手が止まりやすい。

つまり、楽な形式ほど取りこぼす。

では、いつどちらを選ぶか。回答負担を抑え、ざっくり傾向がつかめればよいなら「すべて選ぶ」。該当の有無を正確に拾いたい項目――認知や利用の網羅性が肝になる調査では、項目数が多すぎない範囲で「一つずつ はい / いいえ」を検討する価値がある。

複数回答でわからないこと

最も誤読されやすいのは、選択率の合計だ。

複数回答の%は、足して 100 にはならない。1 人が 3 つ選べば 3 回数えられるのだから当然で、「合計が 100% にならないのはおかしい」と直そうとした時点で、読み方を間違えている。各項目の数字は、回答者全体の中でどれだけの人が選んだか、という独立した割合として読む。単一回答の%と同じ土俵で順位を競わせるのも、筋が違う。

もう一つ、選択率の低い項目が、本当に少ないのか、リストの下にあって見落とされたのかは、数字だけでは切り分けられない。「すべて選ぶ」形式では、提示する順番そのものが選ばれやすさに影響することがある(提示順の効果)。重要な選択肢を末尾に放置していないか、設計段階で疑っておきたい。

なお、これらの選択率は名義尺度のデータで、選択肢の間に大小や順序はない。年代や性別ごとの違いを見たいなら、クロス集計と組み合わせる。

複数回答とは、選ばせ方ごと設計するもの

複数回答は、ただ「いくつでも選んでいい」設問ではない。どう並べ、どう問うかで、返ってくる数字が変わる。上から眺めて手を止める人がいる。その動きまで含めて、選択肢は設計されている。

その選択率は、何人の選択なのだろう。合計を 100 にそろえたくなる癖を手放し、一つひとつの数字を「全体の中の何人」として読む。

そして次の調査では、ただ選ばせるのか、一項目ずつ向き合ってもらうのかを、設問を作る前に決めておく。選ばせ方を決めることが、複数回答の設計そのものだ。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。