クロス集計とは?ローデータの実例でわかる作り方と分析の進め方
クロス集計とは?ローデータの実例でわかる作り方と分析の進め方
アンケート結果の会議で、よくこういう言葉が出てきます。
「年代別に見たらどうなりますか?」 「新規ユーザーと既存ユーザーで違いはありますか?」 「満足している人は、どの機能を使っているんでしょう?」
クロス集計は、こうした問いに答えるための基本的な分析方法です。ただし、表を作れば分析になるわけではありません。
クロス集計の目的は、回答を細かく分けることではなく、意思決定に必要な違いを確かめることです。
この記事では、架空のアンケートローデータを使いながら、クロス集計の作り方と分析例を解説します。
クロス集計とは
クロス集計とは、ある設問の回答を、別の設問や属性で分けて集計する方法です。
たとえば、全体の満足度だけを見ると「満足している人は多い」とわかります。そこに「利用頻度」という切り口を加えると、「毎日使う人と月1回使う人で満足度が違うのか」を確認できます。
単純集計とクロス集計の違い
単純集計は、1つの設問だけを集計します。
満足度
- 満足: 14人
- どちらでもない: 6人
- 不満: 4人
クロス集計は、2つ以上の項目を組み合わせて見ます。
満足度 × 利用頻度
- 毎日使う人の満足度
- 週1回使う人の満足度
- 月1回使う人の満足度
単純集計は全体像を見るために使います。クロス集計は、どのグループに違いがあるのかを見るために使います。
クロス集計でわかること
クロス集計で見たいのは、きれいな表ではありません。
次のような違いです。
- 新規ユーザーと既存ユーザーで、満足度に差があるか
- 利用頻度が高い人ほど、継続意向も高いか
- 認知経路によって、購入意向に違いがあるか
- サポート利用経験がある人ほど、不満が多いか
大事なのは、その違いが次の判断につながるかどうかです。
クロス集計を始める前に決めること
クロス集計を始める前に、まず決めるべきことがあります。
それは、何を判断したいのかです。
「年代別に見たい」は、まだ分析の問いではありません。年代別に見ることで、何を決めたいのでしょうか。
新規ユーザー向けの導線を改善したいのか。既存ユーザー向けの機能を強化したいのか。広告の訴求を変えたいのか。解約リスクを見つけたいのか。
判断したいことが違えば、見るべき切り口も変わります。
先に立てるべき分析の問い
今回のサンプルでは、次の問いを置きます。
利用頻度によって、サービス満足度と継続意向に違いはあるのか。
もし違いがあるなら、どの利用頻度のユーザーに優先して改善すべきか。
この問いがあると、ただ表を作るだけではなく、どの差を見るべきかが決まります。
ローデータで確認する項目
今回使うローデータには、次の項目があります。
- 回答ID
- 利用頻度
- 満足度
- 継続意向
- 初回設定のわかりやすさ
「初回設定のわかりやすさ」を入れているのは、満足度が低い理由の仮説を少しだけ探れるようにするためです。
クロス集計に使うローデータサンプル
以下は、架空のSaaSツール利用者24人に聞いたアンケート結果です。
アンケートのローデータ
| 回答ID | 利用頻度 | 満足度 | 継続意向 | 初回設定のわかりやすさ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 毎日 | 満足 | 継続したい | わかりやすい |
| 2 | 毎日 | 満足 | 継続したい | わかりやすい |
| 3 | 毎日 | 満足 | 継続したい | ふつう |
| 4 | 毎日 | 満足 | 継続したい | わかりやすい |
| 5 | 毎日 | どちらでもない | 継続したい | ふつう |
| 6 | 毎日 | 満足 | 継続したい | わかりやすい |
| 7 | 毎日 | どちらでもない | 迷っている | わかりにくい |
| 8 | 毎日 | 満足 | 継続したい | ふつう |
| 9 | 週1回 | 満足 | 継続したい | ふつう |
| 10 | 週1回 | どちらでもない | 迷っている | ふつう |
| 11 | 週1回 | 満足 | 継続したい | わかりやすい |
| 12 | 週1回 | 不満 | 迷っている | わかりにくい |
| 13 | 週1回 | どちらでもない | 迷っている | ふつう |
| 14 | 週1回 | 満足 | 継続したい | ふつう |
| 15 | 週1回 | どちらでもない | 継続したい | わかりやすい |
| 16 | 週1回 | 不満 | やめたい | わかりにくい |
| 17 | 月1回 | どちらでもない | 迷っている | ふつう |
| 18 | 月1回 | 不満 | やめたい | わかりにくい |
| 19 | 月1回 | 満足 | 継続したい | わかりやすい |
| 20 | 月1回 | 不満 | やめたい | わかりにくい |
| 21 | 月1回 | どちらでもない | 迷っている | わかりにくい |
| 22 | 月1回 | 不満 | 迷っている | わかりにくい |
| 23 | 月1回 | 満足 | 継続したい | ふつう |
| 24 | 月1回 | 不満 | やめたい | わかりにくい |
このまま眺めても、なんとなく傾向は見えます。ただ、ローデータのままだと、どのグループにどれくらい差があるのかは判断しにくい。
そこでクロス集計を使います。
クロス集計表の作り方
まずは、利用頻度ごとに満足度を集計します。
手順1: 行と列を決める
今回の問いは「利用頻度によって満足度に違いがあるか」です。
そのため、行に利用頻度、列に満足度を置きます。
行: 利用頻度
列: 満足度
値: 回答数
表計算ソフトなら、ピボットテーブルで作れます。
手順2: 実数でクロス集計する
まずは実数を見ます。
| 利用頻度 | 満足 | どちらでもない | 不満 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 毎日 | 6 | 2 | 0 | 8 |
| 週1回 | 3 | 3 | 2 | 8 |
| 月1回 | 2 | 2 | 4 | 8 |
| 合計 | 11 | 7 | 6 | 24 |
この表を見ると、毎日使う人には不満がいません。一方で、月1回の人は8人中4人が不満です。
ただし、実数だけではグループ間の比較がしにくいので、割合も見ます。
手順3: 割合でクロス集計する
各利用頻度の合計を100%として、割合を計算します。
| 利用頻度 | 満足 | どちらでもない | 不満 |
|---|---|---|---|
| 毎日 | 75.0% | 25.0% | 0.0% |
| 週1回 | 37.5% | 37.5% | 25.0% |
| 月1回 | 25.0% | 25.0% | 50.0% |
グラフで見る利用頻度別の満足度
割合にすると、差がはっきりします。
利用頻度が下がるほど、満足の割合は下がり、不満の割合は上がっています。
ここで言えるのは、「利用頻度と満足度には関係がありそうだ」ということです。ただし、これだけで原因までは言えません。
クロス集計の分析例
クロス集計では、差を見つけたあとが本番です。
表を見て「月1回ユーザーの不満が高いです」で止めると、報告にはなります。でも、意思決定にはまだ少し遠い。
次に見るべきなのは、その差がどんな行動につながっているかです。
分析例1: 利用頻度別の満足度を見る
今回の満足度クロス集計からは、次の仮説が立ちます。
利用頻度が低いユーザーほど、サービスの価値を感じにくく、不満を持ちやすいのではないか。
ただし、注意が必要です。
「利用頻度が低いから不満なのか」「不満だから利用頻度が低いのか」は、この表だけではわかりません。
クロス集計は、関係を見つける方法です。原因を確定する方法ではありません。
だから、ここで必要なのは断言ではなく、次の調査や施策につながる問いです。
月1回ユーザーは、どの場面で価値を感じられていないのか。
利用頻度を上げれば満足度が上がるのか。
それとも、月1回利用でも価値が伝わる設計に変えるべきなのか。
分析例2: 利用頻度別の継続意向を見る
次に、利用頻度と継続意向をクロス集計します。
| 利用頻度 | 継続したい | 迷っている | やめたい | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 毎日 | 7 | 1 | 0 | 8 |
| 週1回 | 4 | 3 | 1 | 8 |
| 月1回 | 2 | 3 | 3 | 8 |
| 合計 | 13 | 7 | 4 | 24 |
割合で見ると、こうなります。
| 利用頻度 | 継続したい | 迷っている | やめたい |
|---|---|---|---|
| 毎日 | 87.5% | 12.5% | 0.0% |
| 週1回 | 50.0% | 37.5% | 12.5% |
| 月1回 | 25.0% | 37.5% | 37.5% |
月1回ユーザーは、満足度だけでなく継続意向も低いことがわかります。
これは、優先度を考えるうえで重要です。
もし事業上の課題が「解約率を下げること」なら、月1回ユーザーの体験を詳しく見る価値があります。逆に、課題が「ヘビーユーザーの単価を上げること」なら、毎日使うユーザーを別の切り口で見るべきかもしれません。
同じクロス集計でも、事業課題によって読むべき意味は変わります。
分析例3: 不満の背景を別の項目で見る
最後に、満足度と初回設定のわかりやすさをクロス集計します。
| 初回設定のわかりやすさ | 満足 | どちらでもない | 不満 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| わかりやすい | 6 | 1 | 0 | 7 |
| ふつう | 5 | 4 | 0 | 9 |
| わかりにくい | 0 | 2 | 6 | 8 |
| 合計 | 11 | 7 | 6 | 24 |
この表では、「初回設定がわかりにくい」と答えた人の中に、不満が集中しています。
ここから、次の仮説が立ちます。
低頻度ユーザーの不満は、サービス価値そのものよりも、初回設定でつまずいた経験と関係している可能性がある。
もちろん、これも確定ではありません。
ただ、次にやるべきことは少し見えてきます。月1回ユーザーに追加インタビューをするなら、「なぜ使わないのですか」と聞くだけでは足りません。
初回設定で何を期待していたのか。どこで止まったのか。設定後に、最初の価値を感じるまでに何が足りなかったのか。
クロス集計は、こうした次の問いを絞るために使えます。
クロス集計でよくある失敗
クロス集計は便利ですが、使い方を間違えると、むしろ判断を曇らせます。
失敗1: とりあえず全部の項目を掛け合わせる
アンケート項目が10個あれば、組み合わせはいくらでも作れます。
しかし、すべての項目を掛け合わせると、表は増えても問いは深まりません。
先に決めるべきなのは、見たい表ではなく、確かめたい仮説です。
失敗2: 割合だけを見て実数を見ない
「不満が50%」と聞くと大きな問題に見えます。
でも、それが2人中1人なのか、200人中100人なのかで、判断の重みはまったく違います。
割合は比較に向いています。実数は判断の重さを見るために必要です。
失敗3: 相関を原因だと思い込む
今回の例では、利用頻度が低いほど満足度も低く見えました。
ただし、それは「利用頻度を上げれば満足度が上がる」と同じ意味ではありません。
原因を知りたいなら、追加の定性調査、ログ分析、施策検証などが必要です。
失敗4: 差が出たのに次の行動が決まらない
クロス集計で差が出ても、次に何を変えるかが決まらないなら、その分析はまだ途中です。
良いクロス集計は、報告書のページ数ではなく、判断を変えます。
クロス集計を意思決定につなげるチェックリスト
クロス集計を作る前に、次のチェックリストを使うと、分析が迷子になりにくくなります。
分析前のチェックリスト
- この集計で、どの意思決定を前に進めたいか
- 比較するグループは、行動や文脈の違いを表しているか
- その切り口は、ただ見やすいだけではないか
- 差が出た場合、何を変えるのか
- 差が出なかった場合、何を保留するのか
分析後のチェックリスト
- 割合だけでなく実数も確認したか
- サンプル数は、判断に使えるだけ十分か
- 差を原因として断定していないか
- 次に必要な追加調査や検証は何か
- 事業上の優先度と分析結果がつながっているか
まとめ: クロス集計は「分ける技術」ではなく「判断をよくする技術」
クロス集計は、アンケート分析の基本です。
けれど、本当に大事なのは、表の作り方そのものではありません。
何を判断したいのか。
どの違いを見れば、その判断が少し良くなるのか。
差が見えたあと、次に何を確かめるのか。
クロス集計は、数字を分けるための道具ではなく、問いを絞るための道具です。
表が増えたのに判断が進まないときは、たいてい集計が足りないのではありません。問いがまだ太すぎるのです。
まずは1つの意思決定を選ぶ。そこから、必要な切り口を選ぶ。
クロス集計は、その順番で使うと、ただの表ではなく、チームが次の一手を決めるための材料になります。
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クロス集計表テンプレート
アンケート結果のクロス集計に使えるExcelテンプレート。集計関数・グラフ設定済み。
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