単純集計(GT)

単純集計(GT)とは、各設問の回答を選択肢ごとに数え上げ、回答者全体での回答数(n)と割合(%)を出す、もっとも基本的な集計方法です。GT は Grand Total(グランドトータル)の頭文字です。

単純集計を具体例で理解する

100 人に「このサービスに満足していますか」と聞いたとする。

集まった回答を選択肢ごとに数えると、「満足」が 72 人、「どちらでもない」が 18 人、「不満」が 10 人。これを全体に対する割合に直すと、満足 72%、どちらでもない 18%、不満 10% になる。

設問ごとに、この「何人が・どの選択肢を選んだか」を一覧にしたもの。それが単純集計だ。

調査票が手元に戻ってきて、まず最初に作るのがこの表である。全体としてどんな傾向なのかを、設問単位でざっと掴むための起点になる。

単純集計の仕組み

やっていることは、回答を選択肢ごとに積み上げて数え、それぞれを母数で割って割合に直す、それだけだ。

ここで決め手になるのが「何を母数にするか」である。回答者全体を母数にするのか、その設問に答えた人だけを母数にするのか。「わからない」「無回答」をどう扱うのか。同じ回答データでも、母数の置き方ひとつで割合は変わる。

無回答や「わからない(DK)」を母数から外して、有効回答だけで割った割合を「有効パーセント」と呼ぶ。逆に全体を母数にすれば、無回答そのものの大きさも見える。どちらが正しいということはなく、何を読みたいかで決める。だからこそ、表には必ず「n=いくつか」を添える。

単純集計はどこまでで足りるのか

全体の傾向を掴みたいだけなら、単純集計で足りる。

  • 各設問で、どの選択肢が多数派か
  • 満足・不満の全体の温度感
  • 自由回答以外の、回答の分布や偏り
  • 回答に不備がないかというデータ品質の確認

一方で、「その数字は誰の数字か」を知りたくなった瞬間、単純集計だけでは止まる。20 代と 50 代で満足度は違うのか、よく使う人ほど評価が高いのか——属性や行動で切り分けて比べたいなら、クロス集計に進む。単純集計は一つの設問を全体でまとめた数字、クロス集計はそこに「誰の」という切り口を一本足した数字、と捉えると境目がはっきりする。

単純集計でわからないこと

単純集計の数字は、全員をひとまとめにした平均的な姿である。だから、その裏にある属性ごとの差は見えなくなる。

全体で満足 72% でも、20 代では 50%、50 代では 90% かもしれない。単純集計の表は、この内訳を最初から映さない。「全体は悪くない」で安心すると、特定の層の不満を見落とす。

もう一つ、割合は母数の置き方で動く。無回答を母数に含めるか外すかで同じ「満足」の % は変わるし、「わからない」を一つの選択肢として残すか欠損として外すかでも変わる。後段で別の人が同じ表を引用したとき、母数がずれていれば数字も食い違う。表の % だけを一人歩きさせず、n と母数の定義をセットで残すことが、分析を壊さないための最低条件になる。

単純集計とは、まだ問いになる前の地図である

単純集計は、答えを出す道具ではない。

それは、データ全体を一度ならして見渡し、「どこが気になるか」のあたりをつけるための地図だ。多数派はどこか、偏りはどこか、欠けはどこか。地図の上で気になった一点を、属性で切り、時系列で追い、本当の問いへと変えていく。

その 72% は、誰の 72% なのか。

その問いが浮かんだとき、あなたはもう単純集計の外側に立っている。まず全体を正しく数えること。母数を曖昧にしないこと。地味だが、ここを丁寧にやった調査だけが、次の一歩を踏み出せる。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。