ローデータ
ローデータとは、アンケートなどの回答を集計する前の、回答者一人ひとりの元データのことです。1 行が 1 人の回答者を表し、誰がどの設問にどう答えたかが、加工されないまま並んでいます。
ローデータを具体例で理解する
調査会社から納品物を受け取ったとする。
最初に開くのは、たいてい集計表だ。「満足している人は 72%」「20 代は 50%」といった、すでにまとめられた数字が並んでいる。
ただ、同じ納品物の中に、もう一つ別のファイルが入っていることがある。1 行目に「回答者 001、Q1=2、Q2=1、Q3=4…」、2 行目に「回答者 002、Q1=1、Q2=3…」と、回答者の数だけ行が続く表だ。
これがローデータである。
集計表が「答えのまとめ」だとすれば、ローデータは、そのまとめを作る前の一人ひとりの回答そのものだ。
ローデータの仕組み
ローデータは、行と列でできている。
行は回答者を表す。1 行= 1 人で、回答者が 500 人いれば 500 行になる。列は設問を表し、Q1、Q2 と並んでいく。多くの場合、回答は「2」「1」のような数字で記録され、その数字が何を意味するか(例: 2=やや満足)は、別の対応表(レイアウト)を見て初めて読める。
単純集計やクロス集計は、すべてこの行と列の集まりから計算されている。集計表は結論ではなく、ローデータを数え上げた結果なのだ。
ローデータは何のために持つのか
ローデータを手元に持つと、次のようなことができる。
- 納品された集計表とは違う切り口で、自分で集計し直す
- 「20 代の女性だけ」「週 1 回以上使う人だけ」と、条件を絞って見直す
- 自由回答を一件ずつ読み、数字の裏にある言葉を確かめる
- 後日、別の問いが生まれたときに、もう一度同じデータから分析する
だからこそ、調査を発注するときは、納品物を集計表だけにしないほうがいい。集計表は誰かが選んだ切り口の答えにすぎず、ローデータがあって初めて、自分の問いで切り直せる。生のデータは、一度きりの報告ではなく、何度でも立ち返れる資産になる。
ローデータでわからないこと
一方で、ローデータはそのままでは何も語らない。
「Q3=4」という数字の列を眺めても、設問文と選択肢の対応表がなければ意味は読めない。集計し、比べて、初めて傾向が見えてくる。生のデータは中立に見えて、実際には切り出し方しだいで結論が変わる。同じローデータから、ある人は「満足度は高い」と言い、別の人は「若年層では低い」と言える。
加工されていないということは、解釈の自由度が高いということでもある。
そして、回答者一人ひとりの記録である以上、個人情報の扱いには注意がいる。年齢や居住地、自由回答に書かれた具体的な内容から個人が特定されることもある。社内で共有したり外部に渡したりする前に、誰の回答かを切り離す匿名化が欠かせない。
ローデータとは、集計表の裏にある一人ひとりの行である
報告の場で見えているのは、たいてい平均や割合にまとめられた数字だ。けれど、その一つひとつの数字の下には、実際に答えた人の行がある。
その 72% は、どの行とどの行が積み上がった 72% なのだろう。
次に調査を受け取ったら、集計表だけで終わりにせず、その裏のローデータを開いて、自分の問いで数え直してみたい。まとめられる前の、一人ひとりの声は、そこにまだ残っている。