半構造化インタビュー

半構造化インタビューとは、事前に用意した質問の大枠(インタビューガイド)に沿いながらも、相手の回答に応じて自由に質問を足したり掘り下げたりしていく定性調査の手法です。

半構造化インタビューを具体例で理解する

新サービスをやめた人に、解約の理由を聞くとする。

手元には、聞きたいことのリストがある。「使い始めたきっかけ」「不便だと感じた瞬間」「やめる決め手」。この大枠は、全員に共通して聞く。

ただ、ある人が「正直、最初から半信半疑だった」とこぼしたとする。ここでガイド通りに次へ進めば、その違和感は流れていく。半構造化インタビューでは、「半信半疑、というのは何かきっかけがあったんですか」と、その場で踏み込む。

決めた枠は守りつつ、相手が開いた扉には入っていく。これが基本動作だ。

半構造化インタビューの仕組み

仕組みは、ふたつの要素でできている。

ひとつは、事前に用意するインタビューガイド。全員に共通して聞く主要な質問をならべた、進行の骨格である。もうひとつは、その場で生まれる追加質問。相手の答えに引っかかった点を、用意していなかった角度から掘る。

ガイドが全員分の比較できる土台をつくり、追加質問が一人ひとりの深い文脈を引き出す。この二層構造が、半構造化と呼ばれるゆえんだ。

どんなときに半構造化を選ぶのか

インタビューには、質問も順番も固定する構造化、ガイドを持たず会話に任せる非構造化、その中間にある半構造化の三つがある。判断の軸はシンプルだ。

  • 全員に同じことを聞いて回答を比較したいなら、構造化に寄せる
  • 何を聞くべきかまだわからず、未知の発見がほしいなら、非構造化に寄せる
  • 比較できる軸は残しつつ、想定外の発見も拾いたいなら、半構造化を選ぶ

定性調査の多くがこの手法を採るのは、調査の現場が「ある程度わかっているが、まだ全部はわかっていない」という中間にあることが多いからだろう。

ただし、自由度が高いぶん、聞き手の熟練度がそのまま結果に出やすい。どこで深掘りし、どこで切り上げ、どう次の質問につなぐか。ガイドという地図はあっても、歩き方は聞き手に委ねられている。

半構造化インタビューでわからないこと

半構造化インタビューの弱点は、得られるデータが聞き手によってぶれやすいことにある。

同じガイドでも、深掘りした人としなかった人とでは、聞けた話の量も方向も変わる。聞き手の関心が無意識に質問を選び、「やっぱりそうですよね」のような相づちが、相手の答えを誘導してしまうこともある。

このぶれは、データを横に並べた瞬間に効いてくる。あるテーマを A さんには三度掘り、B さんには一度も聞かなかったとしたら、二人の発言を同じ重さでは比べられない。つまり半構造化のデータは、そもそも全員をきれいに横並びにして「何%がこう答えた」と数える前提では集めていない。

だから、数値で差を比べたいなら、最初から定量調査の設計に寄せたほうがいい。半構造化が得意なのは、数の比較ではなく、ひとつひとつの理由と文脈を理解することだ。横並びにするときは、「全員に等しく聞けた部分」と「その人にしか聞かなかった部分」を切り分けて読むことになる。

半構造化インタビューは、地図を持って迷う技術である

構造化は迷わないが、地図の外には出られない。非構造化はどこへでも行けるが、帰り道を見失いやすい。

半構造化は、その間にある。地図を握ったまま、わざと寄り道を許す。

だから発注するときに見るべきは、質問リストの完成度だけではない。「相手が予想外のことを言ったとき、聞き手はそこに踏み込めるか」。半構造化の成否は、用意した質問よりも、用意していなかった一言にどう反応したかで決まると思う。

そこを動かせるかどうかが、聞けた話と、聞けたつもりの話を分ける。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。