母集団
母集団とは、その調査で結論を当てはめたい対象すべての集まりのことです。
母集団を具体例で理解する
「20 代女性の化粧品の使い方を知りたい」と思って、アンケートを発注したとする。
ここで一度立ち止まってほしい。その「20 代女性」とは、誰のことだろう。
日本に住む 20 代女性のすべてなのか。自社の会員のうちの 20 代女性なのか。直近 1 年に化粧品を買った 20 代女性なのか。同じ「20 代女性」という言葉でも、指している範囲はまるで違う。
この、調査で語りたい対象の全体が母集団である。そして、そこから実際に回答を集める一部が標本になる。
母集団を決めるとは、「この調査の結果は、結局のところ誰についての話なのか」をはっきりさせることだ。
母集団と標本の関係
調査の多くは、母集団の全員には聞けない。だから一部を抜き出して聞き、その結果から母集団の姿を推し量る。これが標本調査の考え方だ。
このとき土台になるのが、母集団に手を伸ばすための名簿やリスト(抽出のもとになる枠)である。会員リスト、調査パネル、住所録などがそれにあたる。
問題は、この枠が母集団とぴったり重ならないことがある点だ。語りたい対象なのに枠に載っていない人がいれば、その人たちはどう頑張っても回答に現れない。逆に、枠には載っているが対象外の人も混じる。だから誰を母集団とするかを決めたら、その対象を絞り込むためにスクリーニング調査で条件を確認したり、対象に何割の人が当てはまるかを示す出現率を見積もったりする。
母集団は何を決めるのか
母集団の定義は、調査設計のかなり早い段階で効いてくる。
裏を返せば、母集団があいまいなまま標本の話を始めると、これらすべての土台が揺れる。「何人集めたか」より先に、「誰の中から集めたのか」が決まっていなければならない。
母集団でつまずきやすいところ
いちばん怖いのは、母集団の定義を曖昧にしたまま標本の数字だけを語ってしまうことだ。
たとえば自社会員に聞いた満足度を、「日本の消費者は」と読み替えてしまう。聞いたのは会員という母集団であって、日本の消費者全体ではない。対象の範囲を一度取り違えると、どれだけ回答を集めても、その数字は最初にずれた相手の話のままだ。
枠から漏れた人の傾向が、枠に載った人と違うほど、このずれは大きくなる。しかも漏れた人には聞けていないので、ずれの大きさは数字の上からは見えない。回答数を増やしても、この種の偏りは小さくならない。
「結果が偏っていないか」を確かめる前に、「そもそも誰について語ろうとしているのか」を確かめる。順番はいつもこちらが先だ。回答者の属性を後から補正しても、母集団の取り違えそのものは直らない。
母集団とは、調査の宛先である
サンプルサイズや誤差は計算できる。でも、母集団を決めるのは計算ではない。「この結果を、誰についての結論として使いたいのか」という、こちらの意思だ。
報告書の数字を見るとき、まずこう問うてほしい。
この数字は、誰の中から出てきたものなのか。
報告書を閉じたあとに残るのは、平均でも誤差でもなく、「これは誰の話だったか」の一点だと思う。母集団を先に決めておくと、その一点に、あとから迷わずに答えられる。