ミックスメソッド

ミックスメソッドとは、定量と定性を一つの調査のなかで組み合わせ、両方の結果を突き合わせることで、どちらか一方だけでは届かない問いに答える設計(混合研究法)です。

ここで大事なのは「両方やる」ことではない。量で測った数字と、質で聞いた言葉を、一つの判断に編み込むこと。そこに設計があるかどうかが、ミックスメソッドと「ただアンケートもインタビューもやった」の分かれ目になる。

ミックスメソッドを具体例で理解する

たとえば、解約を減らしたいとする。

まず定量調査で全ユーザーにアンケートを取り、「契約から 3 か月以内・20 代・低頻度利用」の層で解約率が高いと推計できたとする。数字は「どこで起きているか」を教えてくれる。

けれど、なぜその層が辞めるのかは数字からは出てこない。

そこで、その層だけを呼んで定性調査のインタビューをする。すると「最初の設定でつまずいて、誰にも聞けないまま放置した」という共通の体験が見えてくる。

量で「誰が」を絞り、質で「なぜ」を掘る。この二つがつながったとき、初めて打ち手が決まる。これがミックスメソッドだ。

量と質を、どこで繋ぐか

ミックスメソッドの中心は、データを集める順番ではなく、二つをどう接続するかにある。代表的な設計の型は三つで、どの問いにどれを選ぶかが実務の肝になる。

  • 説明的(量→質):まず量で傾向をつかみ、後から質で「なぜ」を説明する。数字は出たがその解釈に困っている、というときに向く。
  • 探索的(質→量):まず質で仮説や聞くべき項目を発掘し、後から量で一般化・検証する。何を測ればいいかがまだ定まっていないときに向く。
  • 並行・収れん(量と質を同時に集めて突き合わせ):別々の角度から同じ問いを裏取りする。一方が言い切れないことを他方で確かめたい(トライアンギュレーション)ときに向く。

順番は中立ではない。困っているのが「数字の意味」なら量を先に、「測る対象そのもの」なら質を先に置く。先に何を確定させたいかで、型は決まる。

ミックスメソッドでわからないこと、間違えやすいこと

最大の落とし穴は、統合の不在だ。

アンケートとインタビューを両方実施しても、報告書のなかで別々の章に並べただけなら、それは混合研究法ではない。量の結果と質の結果を突き合わせ、食い違いや補強を読む——この統合の設計がなければ、手間だけが二倍かかって答えは深まらない。

そして実際、コストも期間も両方ぶん必要になる。だからこそ、片方をもう片方の飾りにしないことが要る。インタビューを数字の「添え物」にしない。逆に、わずかな声を都合よく数字で権威づけしない。量と質は対等な証拠として扱う。

ミックスメソッドは、手法の足し算ではない

調査の経験が浅いうちは、「両方やれば安心」と考えてしまいやすい。けれど、安心を生むのは手法の数ではない。

量が指し示した場所に質で降りていく。あるいは質で見つけた仮説を量で確かめる。その往復のなかで、どちらか単独では出せなかった一つの答えが立ち上がる。

だから次にミックスメソッドを組むなら、二つの手法を選ぶより先に、量の「どれくらい」と質の「なぜ」をどこで突き合わせるかを決めておきたい。

その接続点こそが、二倍の手間を一つの答えに変えるか、別々の報告書で終わらせるかを分ける。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。