アンケート結果のグラフの選び方:データの型と比較の種類で決める
目次
アンケートを集計したあと、多くの人がグラフで手を止めます。円にするか棒にするか、色は何色か。見た目の相談から入ると、たいてい迷います。
グラフ選びは、見た目の好みで決める作業ではありません。データの型と、伝えたい比較の種類が決まれば、使うグラフはほぼ一意に決まります。
この記事を読み終えると、集計表を前にして「このデータでこの比較を見せたいなら、この図」と機械的に選べるようになります。あわせて、3D 円グラフ・二重軸・切断軸のように誤読を生む図を見分け、直せるようになります。題材は、ドラッグストアの来店客満足度アンケート(回答者 80 人)です。数字はすべてこの記事のための架空データで、実在店舗の調査結果ではありません。
グラフは何の比較を見せたいかで決まる
グラフを選ぶ前に確かめることは 2 つだけです。データの型と、伝えたい比較の種類です。
データの型は 3 つに分けます。
- 名義尺度
- 順序のないカテゴリ。来店目的(医薬品・日用品・化粧品)など。
- 順序尺度
- 順序はあるが間隔が等しいとは限らない段階。満足度の 5 件法など。
- 量的データ
- 金額・個数・時間のように数として足し引きできる値。
伝えたい比較は 5 つに整理できます。構成比(全体の内訳)、大小(項目間の順位)、推移(時間変化)、関係(2 変数の対応)、分布(ばらつき)です。この 2 つを決めると、第一候補のグラフは表 1 のように定まります。
表 1: データ型と比較からグラフを選ぶ判断表
| 伝えたい比較 | 主なデータ型 | 第一候補のグラフ | 補足 |
|---|---|---|---|
| 構成比 | 名義・順序 | 横棒グラフ | 円は 3〜4 区分までに限る |
| 大小の順位 | 名義 | 横棒グラフ(降順) | 縦棒はラベルが長いと読みにくい |
| 層別の構成比 | 名義・順序 × グループ | 100% 積み上げ帯グラフ | クロス集計の比較向き |
| 順序尺度の賛否 | 順序(5 件法など) | 発散型積み上げ帯グラフ | 中立を中央に置く |
| 推移 | 量・割合 × 時間 | 折れ線グラフ | 時点をつなぐ |
| 関係 | 量 × 量 | 散布図 | 2 変数の対応を見る |
| 分布 | 量 | ヒストグラム・箱ひげ図 | ばらつきと外れ値を見る |
グラフ選びの土台には、位置の比較がいちばん正確に読めるという知覚の性質があります。同じ基準線に沿った長さや位置の違いは、人の目が正しく比べられます。一方で、角度や面積の違いは正確に読めません。円グラフが不利で、横棒が有利なのはこのためです。これは Cleveland と McGill の実験以来くり返し確かめられている知覚の事実で、書き手の好みではありません。
この記事の満足度アンケートでは、構成比・大小・層別・順序・推移の比較を順に扱います。散布図とヒストグラムが向く量 × 量・分布の比較は、この調査には該当する設問がないため表 1 の参照だけにとどめます。
単一回答の構成比は横棒で読ませる
来店目的のように 1 つだけ選ぶ設問の構成比は、円グラフより横棒グラフのほうが読みやすくなります。理由は、割合の順位が長さで正確に比べられるからです。
表 2 は主な来店目的の構成比です。
表 2: 主な来店目的の構成比(全体 80 人)
| 来店目的 | 回答数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 医薬品 | 26 | 32.5% |
| 日用品 | 24 | 30.0% |
| 化粧品・美容 | 14 | 17.5% |
| 食品・飲料 | 12 | 15.0% |
| その他 | 4 | 5.0% |
| 合計 | 80 | 100.0% |
このデータを円グラフにすると、医薬品 32.5% と日用品 30.0% の扇形はほとんど同じ大きさに見え、どちらが多いのか目で判断できません。3D の円にして手前を医薬品に置けば、遠近で面積が歪み、差はさらに読めなくなります。
同じ数字を、割合の大きい順に並べた横棒にすると、バーの右端の位置で順位がすぐ分かります。医薬品と日用品の 2.5 ポイントの差も、長さの違いとして読み取れます。単一回答の構成比では、次のように使い分けます。
- 横棒グラフ(降順)
- 区分が 5 つ以上、または順位を正確に見せたいとき。既定の第一候補。
- 円グラフ
- 区分が 3〜4 つまでで、値の差がはっきりしているときだけ。
- 帯グラフ(1 本)
- 複数の集団で同じ内訳を並べて比べたいとき。
区分が多い設問ほど、円は不利になります。医薬品から食品・飲料まで 5 区分あるこの設問は、横棒が素直な選択だ。
クロス集計は 100% 積み上げ帯で層を比べる
来店頻度で満足度がどう変わるかを見るクロス集計は、100% 積み上げ帯グラフが向いています。各グループを 100% に伸ばして内訳を横に積むと、グループ間の構成比の違いが基準線からの長さで比べられるからです。
表 3 は来店頻度別の総合満足度です。5 件法を、満足(非常に満足+満足)・中立・不満(不満+非常に不満)の 3 区分にまとめて割合で示しました。満足の割合は Top-2-box と呼びます。5 件法で上位 2 段階を合計した割合のことです。
表 3: 来店頻度別の総合満足度(行方向を 100% とした割合)
| 来店頻度 | 人数 | 満足 | 中立 | 不満 |
|---|---|---|---|---|
| 週 2 回以上 | 20 | 75.0% | 15.0% | 10.0% |
| 週 1 回 | 28 | 60.7% | 25.0% | 14.3% |
| 月 2〜3 回 | 22 | 40.9% | 31.8% | 27.3% |
| 月 1 回以下 | 10 | 30.0% | 30.0% | 40.0% |
帯グラフにするときのコツは、満足を各帯の左端にそろえることです。左端がそろっていれば、満足の割合の違いが左からの長さで一目で比べられます。この表では、来店頻度が下がるほど満足の割合が下がり、不満が増えています。
ただし、人数の欄を必ず一緒に見せてください。月 1 回以下は 10 人しかいません。40.0% が不満といっても、実数では 4 人です。割合はグループ間の比較に向き、実数はその重みを確かめるために要ります。少人数のグループを大きな割合で見せると、偶然を傾向のように誤読します。クロス集計そのものの作り方はクロス集計の記事に、集計全体の進め方はアンケート集計の全体像にまとめています。
5 件法は発散型の積み上げ帯で見せる
複数の項目を 5 件法で聞いた結果は、発散型の積み上げ帯グラフが見やすくなります。中立を中央の基準線に置き、肯定側を右、否定側を左へ伸ばすと、どの項目で不満が多いかが左側の長さで比べられます。
表 4 は 4 項目の満足度です。
表 4: 項目別満足度(全体 80 人・5 件法)
| 項目 | 満足 | 中立 | 不満 |
|---|---|---|---|
| 接客 | 62.5% | 22.5% | 15.0% |
| 品揃え | 57.5% | 25.0% | 17.5% |
| 価格 | 37.5% | 32.5% | 30.0% |
| レジ待ち | 30.0% | 27.5% | 42.5% |
発散型では、中立の帯を中央に置き、そこから右へ満足、左へ不満を積みます。項目は不満の割合が大きい順、または満足から不満を引いた差の小さい順に並べます。こうすると、左に長く伸びる項目が改善の候補として浮かびます。この調査では、レジ待ちの不満が 42.5%、価格の不満が 30.0% と、左側に長く伸びます。
すべての段階を単純な棒に分けて並べると、5 本 × 4 項目で 20 本になり、どの項目が弱点か読み取れません。順序尺度は、段階を積んで賛否の重心を見せる方が速く伝わります。色は満足から不満へ段階順のグラデーションにし、途中で色相を飛ばさないでください。5 件法の設計そのものはリッカート尺度を、Top-2-box の使い方はTop-2-box の解説を参照してください。
時系列は折れ線でつなぐ
満足度が月ごとにどう動いたかは、折れ線グラフでつなぎます。時点を線で結ぶと、上がっているのか横ばいなのかが傾きで読めるからです。
表 5 は月次の Top-2-box 満足度です。各月におよそ 80 人へ聞いた別々の調査で、同じ 80 人を追ったものではありません。
表 5: 月次の Top-2-box 満足度
| 月 | 人数 | Top-2-box |
|---|---|---|
| 2026-01 | 80 | 52.5% |
| 2026-02 | 78 | 50.0% |
| 2026-03 | 82 | 48.8% |
| 2026-04 | 80 | 53.8% |
| 2026-05 | 80 | 51.3% |
| 2026-06 | 80 | 55.0% |
この 6 か月の満足度は 48.8% から 55.0% の範囲で、ほぼ横ばいです。折れ線にするときは、点の数(時点)が 3 つ以上あることを確かめてください。2 点だけを線で結ぶと、途中も直線的に変化したかのように見えます。棒グラフを時系列に使うと、時点の間隔が均等かどうかが伝わりにくく、推移の傾きも読みにくくなります。
3D と二重軸と切断軸をやめて直す
グラフの誤読は、たいてい 3 つの表現から生まれます。立体化、二重軸、そして軸の切断です。いずれも「差を大きく見せたい」という気持ちが裏にあり、そこが危ない。それぞれ悪い図の特徴と直し方を並べます。
3D 円グラフは平面の横棒に直す
- 悪い図
- 来店目的を 3D の円で描く。手前の扇形が遠近で大きく見え、医薬品 32.5% と日用品 30.0% の順位が歪む。影と厚みが面積の比較をさらに壊す。
- 直し方
- 立体をやめ、平面の横棒に降順で並べる。長さで順位と差が正しく読める。装飾の厚みは情報を足さず、誤読だけを足します。
二重軸は 2 枚に分けて直す
- 悪い図
- 満足度(%)の折れ線と来店客数(人)の棒を、左右で別の軸にして重ねる。2 本が交わる点に意味があるように見えるが、左右のスケールを変えれば交点は自由に動く。
- 直し方
- グラフを 2 枚に分けるか、指標の単位をそろえる。2 変数の関係を主張したいなら、時系列に重ねず散布図で対応を見る。
切断軸は 0 を含めて直す
- 悪い図
- 表 5 の満足度を、縦軸 48%〜56% で描く。48.8% から 55.0% への動きが急上昇のグラフになり、実際はほぼ横ばいの変化が大きな改善に見える。
- 直し方
- 縦軸を 0 から、割合なら 0〜100% で描く。すると 6 か月の満足度がほぼ横ばいだと分かる。どうしても拡大したいときは、軸に切断を明示し「変動はわずか」と注を添えます。
軸を 0 から始めるかどうかは、折れ線でやや議論があります。ごく小さな変化を見せたい探索の場面では、切断した拡大図が役立つこともあります。それでも、読者に配る最終的な図では 0 を含めるのを既定にし、外すなら切断を必ず明示する。この一線を守るだけで、誇張のほとんどは防げます。
業者納品のグラフは軸と分母と n で検収する
外部の調査会社やデザイナーから納品されたグラフは、見た目のきれいさではなく、軸・分母・n を確認して受け取ってください。この 3 点がずれていると、正しい数字から誤った印象が作られます。
表 6 は納品物を受け取るときの確認質問です。1 つでも答えが濁るなら、集計表に戻って裏を取ります。
表 6: 納品グラフの検収質問
| 確認する点 | 業者に投げる質問 |
|---|---|
| 軸 | 縦軸は 0 から始まっていますか。切断があるなら図中に明示していますか。 |
| 分母 | この割合の分母は何ですか。全体ですか、設問を見た人ですか、特定条件の人ですか。 |
| n | 各グループの人数は何人ですか。少人数のセルを大きな割合で見せていませんか。 |
| 二重軸 | 左右で別の軸を使っていませんか。使うなら両方の目盛りが図にありますか。 |
| 装飾 | 3D・影・イラストで面積や長さが歪んでいませんか。 |
| 色 | 順序尺度の色は段階順に並んでいますか。 |
とくに分母の質問は外さないでください。「満足が 60%」と言われたとき、それが全体 80 人のうちなのか、ある設問に答えた一部のうちなのかで、意味がまったく変わります。報告に使う割合は、分母・人数・集計条件をセットで開示するのが、透明性の観点から望まれます。数字の裏取りは、集計に入る前の論理チェックから始まっています。矛盾回答を弾く前工程は論理チェックの設計にまとめました。グラフはその後工程にあたります。
グラフでわかることの限界
正しいグラフを選んでも、言えることには限界があります。ここは最初に押さえておくと、報告での言い過ぎを防げます。
第一に、相関は原因ではありません。表 3 で来店頻度が高い層ほど満足が高くても、「頻度を上げれば満足が上がる」とは言えません。満足だから通うのか、通うから満足なのか、この図だけでは向きが決まらない。原因に近づくには、追加の定性調査やログの分析が要ります。
第二に、少人数のグループの割合は不安定です。この調査の 80 人は教材用の架空データで、層別すると各セルが小さくなります。月 1 回以下の 10 人のような小さな集団は、傾向の断定ではなく仮説の手がかりとして読むのが安全です。
第三に、グラフは悪い設問を救えません。聞き方が誘導的だったり、選択肢が偏っていたりすれば、どんなに正しい図にしても中身は歪んだままです。良いグラフは、良い集計と良い設問の上にだけ立ちます。
持ち帰ってほしいのは 3 点です。データの型と伝えたい比較を先に決めれば、グラフは表 1 から機械的に選べる。円・二重軸・切断軸は差を誇張するので、横棒・分割・0 起点に直す。そして納品された図は、軸・分母・n を確認してから受け取る。この順で選べば、グラフは飾りではなく、次の一手を決める材料になります。
参考文献
- Cleveland, W. S., & McGill, R. (1984). Graphical Perception: Theory, Experimentation, and Application to the Development of Graphical Methods. Journal of the American Statistical Association, 79(387), 531–554. https://doi.org/10.1080/01621459.1984.10478080
- Tufte, E. R. (2001). The Visual Display of Quantitative Information (2nd ed.). Graphics Press. ISBN 978-0961392147. https://www.edwardtufte.com/book/the-visual-display-of-quantitative-information/
- Agresti, A. (2013). Categorical Data Analysis (3rd ed.). Wiley. ISBN 9780470463635
- American Statistical Association (2022). Ethical Guidelines for Statistical Practice. https://www.amstat.org/your-career/ethical-guidelines-for-statistical-practice