二次データ
二次データとは、自分の調査のために集めたものではなく、他者が別の目的で既に集めて公開した統計や資料を、自分の目的に転用して使うデータのことです。
発注側に立つと、調査はつい「アンケートを取ること」から始めたくなる。けれど、知りたいことの半分くらいは、誰かがすでに数えてくれている場合がある。そこを先に当たるかどうかで、調査の費用と時間は大きく変わる。
二次データを具体例で理解する
たとえば「30 代女性向けの新しいサプリを出したい。市場はどのくらいあるのか」と聞かれたとする。
ここでいきなり調査会社にアンケートを発注しなくても、まず手元で確認できるものがある。国勢調査が公開している 30 代女性の人口、家計調査が出している健康関連支出の平均、業界団体が出しているサプリ市場の推計。これらを組み合わせれば、市場規模のおおよその輪郭は描ける。
これらは、あなたのために集められたものではない。総務省は人口を把握するために国勢調査をし、業界団体は会員企業の動向を追うために市場を推計している。その成果物を、あなたが自分の問いに引き寄せて使う。これが二次データである。
逆に、自分のブランドの認知度や、その商品に「いくらまで払うか」といった、世の中のどこにも集計されていない数字は、自分で集めるしかない。自分の目的のために新しく集めるデータを一次データと呼ぶ。
二次データの最小限の仕組み
二次データそのものは、特別な装置ではない。すでにある統計表やレポートを探し、出典をたどり、自分の問いに合う数字を抜き出して読む、という作業の集まりだ。
公的統計、白書、業界レポート、企業の IR 資料などを横断して集め、整理する一連の作業はデスクリサーチと呼ばれ、二次データはその主な材料になる。新しく数字を測るのではなく、すでに測られた数字を選び直す、と考えるとわかりやすい。
二次データで足りるか、一次データが要るか
実務での判断は、おおむねこの順番になる。
- まず二次データで潰せるところを潰す(市場規模、人口動態、業界の大きな傾向)
- それでも残った、自社や自分の問いに固有の部分だけを一次データで埋める
つまり、最初から全部を自前のアンケートで賄おうとしないことだ。二次で輪郭を描き、足りない一点に絞って一次を当てる。この順番を守るだけで、聞くべき設問が絞られ、調査の精度も上がる。世の中の傾向を把握する段階は二次で、自社にしか答えのない問いだけを一次で、と切り分けるのが基本になる。
二次データでわからないこと
二次データの限界は、便利さの裏側にそのまま貼りついている。
第一に、出典の素性。誰が、何のために、どう集めた数字なのかで、信頼度はまったく変わる。公的統計や大手調査機関の数字と、根拠の見えない推計とでは、同じ「市場規模」でも重みが違う。数字を引く前に、出どころと集め方を確かめる必要がある。
第二に、定義のズレ。あなたが言う「30 代女性」と、その統計が言う「30〜39 歳の女性」は、範囲がずれていることがある。「世帯」「利用者」「購入」といった言葉も、調査ごとに数え方が違う。定義が一致していると思い込んだまま数字を並べると、見かけ上はそろっていても、実は別のものを比べてしまう。
第三に、鮮度と粒度。公開されている統計は、集計と公表までに数年の遅れがあることが珍しくない。古い数字を「今の真実」として扱う危うさがある。また、全体の傾向はわかっても、あなたが本当に知りたい細かい切り口までは分かれていないことも多い。
二次データは、他人の物差しで測られた数字である。だからこそ、その物差しが自分の問いに合っているかを、使う側が確かめなければならない。
アンケートを発注する前に、まず統計表を開いて世界の輪郭をなぞってみる。そこまで誰かが数えてくれた数字で描き、それでも残る空白の一点だけを、自分の手で確かめに行く。その境目を見極める作業こそが、調査の最初の設計だと思う。