一次データ

一次データとは、自分の調査の目的に合わせて、今回はじめて自分で集める元のデータのことです。

「データを集めよう」となったとき、外注先からまず返ってくるのは「既存の資料で足りるか、新しく取りに行くか」という問いだ。一次データは、その後者にあたる。

たとえば、解約理由を確かめたいとき

サブスクの解約が増えている、という相談があったとする。

総務省の統計や業界レポートを当たれば、市場全体で解約率がどう動いているかは分かる。けれど「自社のユーザーが、なぜ先月やめたのか」は、どこを探しても載っていない。そこではじめて、解約者に直接アンケートを送り、退会画面で理由を聞き、数人にインタビューする。こうして自分の問いのために取りに行った回答が、一次データだ。

すでにある統計をつなぎ合わせるデスクリサーチ二次データだけでは、ここに手が届かない。自分の問いの形に合った数字は、自分で取りに行くしかない。

一次データの最小限の仕組み

一次データは、調査の目的を先に決め、その目的に答える形で新しくデータを設計し、回答者から直接集める。アンケート、インタビュー、行動の観察、実験などが代表的な集め方だ。

二次データとの違いは、誰の目的のために集められたか、にある。二次データは、政府や調査会社が別の目的で集めた数字を、こちらが借りてくる。一次データは、最初から自分の問いのために組み立てる。だから設問も対象者も粒度も、自分の判断に合わせて決められる。

いつ一次を取り、いつ二次で足りるか

費用も時間もかかる以上、何でも一次で取ればいいわけではない。判断材料として、次のときに一次へ進む。

  • 二次データを探しても、知りたい数字がそもそも存在しない
  • 出典が古く、いま起きていることを映していない(鮮度)
  • 全国や業界全体の粗い区分しかなく、自社の顧客まで絞れない(粒度)
  • 競合も同じ資料を見ており、そこから独自の発見は出てこない(独自性)

逆に言えば、公的統計や業界資料で埋まる問いは、先に二次データで潰しておく方がいい。市場の輪郭をつかむ市場調査の多くは、二次データの突き合わせで済む部分が大きい。足りない一片だけを一次に回すと、無駄が出にくい。

ここにはトレードオフがある。一次データは、自分の問いにぴったり合い、鮮度が高く、設計から品質まで自分で統制でき、そのデータを自社だけが持てる。代わりに、設計・実施・回収・分析に費用と時間がかかる。二次データはその逆で、安く速い代わりに、自分の問いに対しては既製品のずれが残る。

集めたからといって、正しいとは限らない

最も注意したいのは、自分で集めたデータほど信じ込みやすい、という落とし穴だ。

一次データは、設計した本人の判断がそのまま品質になる。聞く相手を偏って選べば、偏った声しか集まらない。誘導的な設問を置けば、欲しい答えがそのまま返ってくる。「自分で取った生の声だから本当だ」と思った瞬間に、設計の歪みが見えなくなる。一次であることは、正しさを保証しない。保証するのは、目的への近さだけだ。

そしてもう一つ。一次データは集めた時点の、その対象者の答えにすぎない。同じ問いでも、来月になれば数字は動く。変化を追いたいなら、一度きりではなく同じ条件で測り続ける設計が要る。

一次データとは、自分の問いの形に切り出した数字

二次データは、誰かが別の目的で測った世界の写しだ。便利だが、自分の問いに対しては、いつもどこかサイズが合わない。

一次データは、そのずれを埋めるために、自分の問いの形に世界を切り出す行為である。

だから一次を取ると決める前に、集める手段より先に、確かめたい問いを一行だけ書き出してみてほしい。この出費と時間をかけてでも自分の手で知りたいことが、そこに書けてから設計に進めばいい。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。