KA法

KA法とは、インタビューや観察で集めた発言録を、出来事ごとに「出来事 → 心の声 → 価値」へと変換し、その人が本当に求めていた顧客価値を引き出す定性データの分析手法です。

誤解しやすい点を先に一つ。KA法は、インタビューの最中に使う聞き方の技術ではない。インタビューや観察は材料集めで、KA法が動くのはそのあと。集めた発言録(VoC・発話データ)を読み解く、分析の手法である。もとは商品開発のマーケティング手法として考案され、のちに UX デザインの分析手法へ改良・普及した。なお、名前の「KA」が何の頭文字かには諸説あり、定説はない。

KA法を具体例で理解する

あるユーザーがインタビューでこう話したとする。

「あの限定スイーツ、平日に 1 時間並んでやっと買えました」

この一文を、まず「出来事」として書き出す。「平日に 1 時間並んで限定スイーツを買った」。解釈を入れず事実だけを残す。

次に「心の声」を考える。ただし、好き勝手に想像してよいわけではない。同じインタビューで本人が「自分へのご褒美」と語っていたなら、それを根拠に「がんばった自分には、これくらいの特別があっていい」と推し量る。発言や観察に紐づく推論であって、書き手の願望ではない。

最後に、その心の声を一段抽象化して「価値」を取り出す。「自分をねぎらう体験への価値」。こうして「並んだ」という事実が、求めていたものへ翻訳される。これが KA法の核だ。

KA法の仕組み

KA法は、1 つの出来事を 1 枚のカードにして、3 段で書き分ける。

  • 出来事:発言録から取り出した、実際に起きた事実や行動(解釈を入れない)
  • 心の声:その瞬間に感じていたであろう気持ち(発言・観察を根拠に推論する)
  • 価値:その背景にある、本当に求めていた本質

要約するのではなく、印象に残った出来事を一つずつ変換するのが肝だ。たまった価値カードを眺め、似たものを寄せていくと、ユーザー像や求めているものの構造が見えてくる。

なお、似た作業に KJ法があるが別物だ。KJ法は集めた情報を親和性でグルーピングして発想を生む手法で、KA法は一つの発言を「出来事 → 心の声 → 価値」へ変換し顧客価値を取り出す分析である。

KA法は何に使うのか

KA法が効くのは、数字ではなく「人が何を求めているか」を言葉にしたいときだ。

  • インタビューや 定性調査 の発話録から、顧客価値やニーズの仮説を立てたいとき
  • VoC(顧客の声)の断片を、企画に使える価値の言葉に翻訳したいとき
  • 新しい商品やサービスが誰のどんな本質に応えるのかを、関係者で共有したいとき

割合や差を 定量調査 で測る前の、価値の仮説づくりに置くと位置づけがはっきりする。

KA法でわからないこと

いちばん注意したいのは、「心の声」と「価値」がユーザー本人ではなく分析者の解釈だということだ。

ユーザーは「自分をねぎらいたい」とは言っていない。書き手が出来事から読み取った推論にすぎない。だからこそ、推論を発言や観察に紐づけておくことが欠かせない。根拠から切り離して読み込みすぎると、ほしい結論に都合よく価値をつくり出せてしまう。「並ぶのが面倒だった」という不満を見落とすこともある。

恣意性を抑えるには、価値カードを一人で確定させないことだ。元の発言に戻れる状態を保ち、複数人で「この心の声は飛躍していないか」を確かめる。根拠を発言に残すほど、信頼できる材料になる。

KA法は、発言の奥にある「ほしかったもの」を言葉にする

ユーザーの言葉は、たいてい出来事の報告で終わっている。並んだ、買った、やめた。そのままでは、次に何をつくればいいかは決まらない。

KA法が変えるのは、聞いたことの扱い方だ。「何と言ったか」ではなく「何を求めていたか」を発言を手がかりに言葉にすると、見るべき指標も体験も変わってくる。

価値カードがそろったら、いちど自分に聞いてみたい。

これは本人が本当にほしかったものか、それとも私がほしい結論か。元の発言へたどり直せるなら、その価値は信じていい。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。