デスクリサーチ

デスクリサーチとは、アンケートやインタビューで新しくデータを集めるのではなく、公的統計・業界レポート・社内資料など、すでに存在する情報を集めて読み解く調査手法です。

名前の通り、机の上——いまなら検索窓——から始まる調査である。対になる言葉は、回答者のところへデータを取りに行く「実査」だ。

デスクリサーチを具体例で理解する

「共働き世帯向けに家事代行サービスを始めたい。市場はどのくらいあるか」と聞かれた場面を思い浮かべてほしい。

いきなりアンケートを発注する前に、机の上でできることがある。政府統計のポータルである e-Stat を開けば、労働力調査から共働き世帯の数が引ける。家計調査からは家事サービスへの支出がわかる。業界団体の市場推計を重ねれば、市場の輪郭はかなり描ける。

探す。出どころを確かめる。数字同士を突き合わせる。この一連の作業がデスクリサーチであり、材料になるのは、他者が別の目的で集めて公開した二次データである。

いつデスクリサーチで済ませ、いつ実査に出るか

判断の軸は「その数字を、世の中の誰かがすでに数えていそうか」に尽きる。

  • 人口や世帯構成、市場規模、業界全体の傾向 → まずデスクリサーチ
  • 自社ブランドの認知率、自社顧客が離れた理由など、自社にしか答えのない問い → 実査で一次データを集める

ただし、見つけた数字をそのまま使えるかは別の話で、三つの確認が要る。鮮度(何年前の数字か。公的統計は公表までに数年遅れることがある)、定義(その統計の「世帯」や「利用者」は、自分の言う意味と同じか)、出所(誰がどう集めた数字か、推計の根拠が示されているか)。どれかが崩れている部分だけ、実査で取り直せばいい。

まずデスクで潰せる問いを潰し、残った一点に絞って実査に出る。市場調査の設計は、たいていこの二段構えになる。

他人の数字を使うときに気をつけること

一番よくある失敗は、他人の調査から数字だけを抜いてくることだ。

「利用意向 60%」という数字を見つけたとき、その分母は誰だろう。サービスを知っている人か、全国の成人か。回答者は 100 人か 1 万人か。分母と設問を確かめずに資料へ貼ると、別の出典の数字と並べたとき、比べられないもの同士を比べることになる。

数字と一緒に、集め方まで持ち帰る。それがデスクリサーチの作法である。

机の上で、問いを研ぐ

正直、デスクリサーチは地味だ。自分で聞きに行った、という手応えは実査ほど強くない。

けれど、すでにある数字で世界の輪郭をなぞっておくと、実査で聞くべき問いが数個まで絞れてくる。机の上で問いを研いでから、現場に出る。この順番を守ることが、調査の予算と時間をいちばん無駄にしない道だと思う。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。