AIインタビュー

AIインタビューとは、AI(多くは大規模言語モデル)が対話形式で回答者に質問し、回答に応じてその場で「なぜ」を追いながら声を集める調査手法です。

AIインタビューを具体例で理解する

新商品のコンセプトを 1,000 人に当ててみたい、とする。

ふつうのアンケートなら、「このコンセプトは魅力的ですか」と聞いて、5 段階で答えてもらう。「魅力的」が 6 割。悪くない。でも、その 6 割が何を魅力だと思ったのかは、自由回答欄の一行から想像するしかない。

AIインタビューでは、ここで会話が始まる。

「魅力的」と答えた人に、AI がすかさず聞く。「具体的にどこがですか」「今の代わりの手段と比べて、何が違いそうですか」。一往復で終わらず、相手の答えに合わせて二往復、三往復と掘る。それを数千人に同時に走らせる。

一人ずつ人間がついて 60 分聞いていたら捌けない人数を、自動の対話で広げる。

これが AIインタビューである。

AIインタビューの仕組み

鍵になるのは、質問が固定されていないことだ。

アンケートの自由回答は、答えてもらって終わり。一往復しかできない。AIインタビューは、回答の中身を読んで次の質問をその場で組み立てる。聞きたい論点だけ決めて道順は決めない、半構造化インタビューに近い進め方を、機械が肩代わりする形だ。

実際にこれをプロダクト化した例もある。たとえば国内の「コルクトーク」は、1,000 人規模の深掘りを短時間・多言語で回すと打ち出し、採用の一次面接や退職理由の聞き取り、顧客満足の深掘りなどに使えるとしている。「熟練リサーチャー並み」とうたう例もあるが、それを真に受けてよいかは、使う側が確かめることになる。

どんなときに AIインタビューを選ぶか

これは人手のデプスインタビューを置き換える道具ではなく、「規模」と「深さ」の中間を埋める道具だと考えるとわかりやすい。

選ぶ理由になりやすいのは、次の場面だ。

  • 深掘りは要るのに、人手のデプスインタビューでは人数を捌けないとき
  • 自由回答よりも構造的に「なぜ」を集め、顧客の声を量として扱いたいとき

回答者の心理という点でも、向き不向きがある。相手が AI だと匿名性が上がり、離職理由のようなセンシティブな本音はかえって出やすい、という指摘がある。一方で、雑談からの脱線や、相手の表情を見て質問を変える呼吸、そこから生まれる思わぬ発見は乏しくなりやすい。

AIインタビューでわからないこと・任せきれないこと

AI と人間のインタビュアーを無作為に振り分けて比べた研究では、AIインタビューでも従来法に劣らない品質のデータが得られ、しかも規模を広げられたと報告されている。ただし三つの留保がいる。

ひとつは、AI が誘導質問を生成しうること。良い設問の作法がそのまま守られるとは限らない。

ふたつめは、想定外の重要な一言を拾って即興で深掘る判断が、熟練のモデレーターに及びにくいこと。決めた論点はたどれても、「いま大事なことを言った」と気づいて道を外れる勘までは、まだ任せきれない。

みっつめは、要約や分析の段階でハルシネーション、つまり実際の発言にない内容がもっともらしく混じりうること。さらに、生成 AI は学習データの偏りを引き継ぐため、特定の集団や見方に寄った答えになりやすいことも、複数の研究が指摘している。

AIインタビューとは、聞く相手ではなく聞く設計を任せること

国際的な調査倫理の規範でも、AI を使うほど人の監督が要り、説明責任は外部に委ねられない、と整理されている。

便利なのは、AI に「何を聞くか」まで丸投げできることではない。

確かめたい問いを持った設計者が、「これは何を検証する対話なのか」を決め、返ってきた声を読み解く。そこは動かせない。AI が広げるのは往復の数であって、何を往復すべきかを決める仕事ではない。

AIインタビューとは、人の代わりに聞いてくれる仕組みではない。

聞きたいことを設計する人がいて、はじめて意味を持つ仕組みである。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。