LLM
LLMとは、大量のテキストで訓練され、文脈に続く語を確率的に予測することで、人間が書いたような文章を生成する大規模言語モデル(large language model)です。
ChatGPT や Claude、Gemini といった、いま多くの人が日常的に触れているサービスは、どれもこの LLM を土台にしている。
「答えている」ように見えて、続きを書いている
自由回答が 3,000 件たまった。読み切る時間はない。
そこで「この回答を 5 つのテーマに分類して」と AI に投げると、数分でそれらしい一覧が返ってくる。要約も、設問のたたき台も、同じ速さで出てくる。まるで、中の人が読んで答えてくれているように見える。
でも、LLM がやっているのは、読んで判断することではない。
膨大な文章から学んだパターンをもとに、「この文脈の次に来そうな語」を一つずつ選び続けている。その積み重ねが、答えの形をした文章になる。検索して事実を引いているのではなく、確からしさで綴っている。ここが、つまずきやすい一点だ。
LLM の仕組み
LLM は、ニュースや本やウェブのテキストを大量に与えられ、「次に来る語」を当てる訓練を繰り返して作られる。EU の AI 法は、こうしたモデルを「大量のデータで訓練され、幅広い多様なタスクをこなせる汎用 AI モデル」と位置づけている。
訓練が終わったモデルは、入力された文章に対して、語の候補それぞれの「もっともらしさ」を計算し、確からしいものをつないでいく。だから出力は、事実の真偽ではなく、訓練データに照らした自然さで決まる。文章の流れを扱う技術という意味では、自然言語処理の系譜にあるが、生成の規模と汎用性が桁違いに大きい。
LLM への指示文はプロンプトと呼ばれ、同じ問いでも書き方しだいで出力は変わる。
調査で何に使えるか
マーケティングリサーチの現場では、たとえば次のような場面で使われている。
社会科学での検証でも、調査・実験・テキスト分析を桁違いに速める可能性が指摘されている。ただし、その検証は、訓練データの偏りや再現性の問題も同時に挙げている。速さと危うさは、いつも対になっている。
LLM でわからないこと
LLM の出力は、流暢でも正しいとは限らない。
第一に、事実を保証しない。米国の標準機関 NIST は、もっともらしいのに誤った内容を自信ありげに述べる現象を「ハルシネーション(作話)」と呼び、生成 AI の主要なリスクに挙げている。
第二に、訓練データの多数派や偏りを映す。LLM の意見は特定の集団に寄ることや、英語圏・西洋・先進国でよく当たり、性別や年代などで偏ることが、査読研究で報告されている。「みんなの声」のつもりが、声の大きかった人の声かもしれない。
第三に、出力が揺れる。同じ入力でも、返ってくる文章は毎回少しずつ違う。
だから、LLM の答えを調査の結論にそのまま乗せることはできない。
流暢さは、正しさの保証ではない。
LLM の答えは、検索結果ではなく確からしい作文
その作文は速く、量をこなし、たたき台として頼もしい。けれど、誰の声を映しているのか、どこが事実なのかは、書いた本人も保証してくれない。
だから調査で使うなら、生成を任せる前に決めておくことがある。
この答えの、何を人が確かめるのか。それを手放さないかぎり、LLM は調査を速める道具になる。