ウェイトバック集計

ウェイトバック集計とは、回収した回答の構成比が母集団の構成比とずれているとき、各回答に重みをつけて補正したうえで集計する手法です。

ウェイトバック集計を具体例で理解する

20 代から 60 代までの満足度を知りたくて、1,000 人にアンケートをかけたとする。

回収を見ると、若い人ばかりが答えていた。20 代が 400 人、60 代は 100 人。けれど実際の市場では、両者はほぼ同じ規模だったとする。

このまま全体の満足度を出すと、若年層の声が二重三重に効いた数字になる。

そこで、回収が多すぎる 20 代の回答を軽く、少なすぎる 60 代の回答を重く扱う。母集団の姿に近づくよう、回答ごとに重りを乗せ直す。これがウェイトバック集計だ。

補正後の「全体」は、頭数を数えた全体ではない。母集団の構成を映すよう測り直した、推計としての全体である。

ウェイトバック集計の仕組み

各グループ(セル)について、母集団での構成比を回収での構成比で割り、その値を重み(ウェイト)として一人ひとりの回答にかける。

母集団で 20% の層が回収では 40% だったなら重みは 0.5、回収では 10% しか取れなかったなら重みは 2.0 になる。重みをかけてから割合や平均を単純集計し直すと、回収の偏りが構成比のうえで打ち消される。

重みづけの軸には、性別・年代・地域のように、母集団の構成比が公的統計などで分かっている属性を使うのが基本になる。

ウェイトバック集計はいつ使うのか

回収構成を整える方法は、ウェイトバックだけではない。

設計の段階で層ごとの回収数を決めておく割付という手もある。「20 代を 200 人、60 代を 200 人」と先に枠を切り、その人数が集まるまで回収する。回収そのものを母集団の形に近づけるやり方だ。

ウェイトバックは、これに対する事後の補正にあたる。割付で整えきれなかったずれや、回収して初めて分かった偏りを、集計の段階で直す。だから二者択一ではなく、割付で大枠を整え、残りの微調整をウェイトバックで吸収する併用がよくある。

重みづけの軸は、満足度や購入意向といった「測りたい結果」と関係が深く、かつ母集団の構成比が分かっている属性を選ぶ。性年代がよく使われるのは、多くのテーマで結果と相関し、母集団側の数字も手に入りやすいからだ。結果と無関係な軸でいくら補正しても、数字はほとんど動かない。

ウェイトバック集計でわからないこと

ここがいちばん大事なところだ。ウェイトバックは万能の補正ではない。

直せるのは、重みづけに使った軸の偏りだけである。性年代で補正しても、「アンケートに答えやすい人」「特定の価値観の人」といった、軸に乗らない偏りはそのまま残る。

しかも極端な重みは副作用を持つ。重み 5 や 10 がつくと、ごく少数の回答者の声が何倍にも増幅され、その人たちのぶれが全体を揺らす。結果として推定の誤差は広がり、有効サンプルサイズ(重みを考慮した実質的な回答者数)は見かけの回収数より小さくなる。誤差の幅は補正前より大きくなることさえある。

そして根本として、抽出の偏りそのものが消えるわけではない。偏って集まったデータを構成比のうえで化粧直ししているだけで、本来届くべき人に届いていない調査は、重みをかけても届いていないままだ。

ウェイトバック集計とは、ずれを認めたうえでの最善である

ウェイトバックは、偏りをなかったことにする魔法ではない。

回収はずれる。どれだけ丁寧に設計しても、答える人と答えない人がいる以上、回収構成は母集団とどこかでずれる。その現実を認めたうえで、分かっている軸についてはできるだけ母集団の姿に近づけておく。誠実な妥協の技術だと思う。

だからこそ、何で重みづけしたかを記録しないウェイトバックは危うい。

補正後の数字の裏には、「この軸は直した、それ以外は直していない」という前提が必ず張りついている。ウェイトバック集計とは、その前提ごと引き受けて、ずれを最小化する手続きである。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。