ストレートライナー
ストレートライナーとは、マトリクス設問などで、内容を吟味せずに全項目へ同じ選択肢を直線的に付ける不良回答、またはそう答える回答者を指す言葉です。
ストレートライナーを具体例で理解する
納品されたアンケートデータを開いて、一人ひとりの回答を眺めていたとする。
ある回答者は、サービスへの評価を尋ねた 10 項目のマトリクス設問で、「使いやすさ」も「サポート」も「価格」も、すべて「4」を選んでいた。
選択肢が縦に並んだ画面で、上から下まで一直線。
これがストレートライナーである。回答欄に文字どおり「まっすぐな線」が引かれているように見えることから、こう呼ばれる。
ストレートライナーの仕組み
検出の基本は、同じ選択肢が何項目連続したかを数えることだ(ロングストリング法と呼ばれる)。10 項目すべてが同じ値なら、まず疑わしい。
背景にあるのは satisficing(サティスファイシング)という心理である。これは、最適な答えを探す労力を惜しみ、「とりあえず通る答え」で済ませてしまう回答態度を指す。とりわけ、同じ形式の質問が縦に積み重なるマトリクス設問は考える負荷が高く、設問の後半や疲れたタイミングで直線回答が出やすくなる。回答時間が極端に短い「スピーダー」とも重なりやすい。
ストレートライナーを判断にどう使うか
ストレートライナーは、データクリーニング、つまり分析前に回答の質を確かめて不良回答を除く工程で使う目安になる。
ただ、ここで誤読が起きやすい。直線回答が、必ず不良回答とは限らない。本当に全項目を同じように評価している人もいるからだ。「全部 4」が、手抜きなのか本心なのかは、その回答だけからは決められない。
だから、見分ける工夫を設計に仕込む。たとえば、途中に意味を反転させた逆転項目(「使いやすい」の中に「操作に迷う」を混ぜる)を置けば、本当に読んでいる人なら答えが変わるはずで、それでも一直線なら不良回答の疑いが濃くなる。回答時間など他の指標と併せて判断するのも同じ理由からだ。
そしてもう一つ。検出して消すより前に、設計段階で減らせる。逆転項目を入れる、設問数を抑える、マトリクスを一問ずつの形式に分けるといった工夫は、直線に答えたくなる状況そのものを和らげる。
ストレートライナーは、消せば済むわけではない
最大の限界は、機械的に消すと正当な回答まで捨ててしまうことだ。
「連続 8 項目以上は除外」といった閾値は便利だが、絶対の正解ではない。閾値を厳しくすれば手抜きをよく捕まえるが、本心で一貫していた人も巻き添えにする。除外しすぎたデータは、もはや母集団を正しく映さない。
ストレートライナーの検出が教えてくれるのは、「この回答は信用できない」という結論ではない。「この回答は確かめたほうがいい」という入り口である。
ストレートライナーは、設問の鏡でもある
不良回答を見つけて取り除く。それ自体は、データをクロス集計などで読み解く前の、まっとうな下ごしらえだ。
でも、直線を引いた回答者を「やる気のない人」と切り捨てる前に、一度立ち止まりたい。
なぜ、その人は直線に答えたくなったのだろう。
似たような質問が延々と続き、選択肢の違いも曖昧で、読むより流すほうが楽だった。だとしたら、まっすぐな線は回答者の怠慢であると同時に、設問のつくりが映った鏡でもある。
まっすぐな線を回答者の手抜きと切り捨ててよいのは、設問の側に落ち度がないと確かめられたときだけだ。
似た問いを並べすぎず、選択肢の差もはっきりしていた。そう言い切れてはじめて、その線は不良回答の名にふさわしくなる。