リクルーティング

リクルーティングとは、調査の対象者を条件にもとづいて募集し、「誰に聞くか」を選び出す作業です。聞きたい相手の条件を決め、その条件に合う人を集め、実際に調査へ参加してもらうところまでを指す。

リクルーティングを具体例で理解する

たとえば、新しい育児アプリについて、利用者の本音をじっくり聞くインタビューをしたいとする。

このとき、誰でもいいわけではない。「0 歳から 2 歳の子どもを育てていて、毎日のように育児アプリを使っている保護者」を、5 人ほど集めたい。

そこで、保有しているパネルに条件を投げて該当しそうな人を抽出したり、知人に紹介を頼んだり、SNS で公募したりする。集まった候補者に短い質問を当てて条件に合うかを判定し、日程の合う人に謝礼を伝えて参加を依頼する。

この、条件に合う相手を募り、選び、参加までつなげる一連の動きが、リクルーティングである。

リクルーティングの仕組み

やっていることは、突き詰めると 3 つだ。

まず、聞きたい相手の条件を決める。次に、その条件に合う人を、何らかの経路から集める。最後に、候補者をスクリーニング調査で判定し、条件に当てはまる人だけを調査へ通す。

集める経路には、調査会社が保有する登録者リストから抽出する方法、過去の参加者や知人をたどる紹介、Web での公募などがある。どの経路を使うかで、集まる人の顔ぶれは変わる。

どの手段を、いつ選ぶのか

リクルーティングの手段に唯一の正解はない。何を知りたいかによって、選ぶべき集め方が変わる。

ポイントは、定量調査と定性調査で狙いが違うことだ。

サンプルを数百・数千の単位で集め、母集団の傾向を推計したい定量調査では、特定の層に偏らないように、登録者リストから条件で広く抽出する方法が向く。多くの人数を、似た条件で安定して集められるからだ。

一方、5 人や 10 人にじっくり話を聞く定性調査では、狙いがそもそも違う。ここで欲しいのは「平均的な人」ではなく、そのテーマについて語れる情報量の多い人だ。だから、紹介で深く該当する人にたどり着いたり、公募で意欲のある人を募ったりする手段が生きてくる。定性では、代表性よりも、何を語れるかで相手を選ぶ。

つまり、人数で代表性を取りに行くのか、一人ひとりの中身で深さを取りに行くのか。この狙いの違いが、手段の使い分けを決める。

リクルーティングでわからないこと

最も注意すべきなのは、リクルーティングの設計そのものが、集まる人の偏りを決めてしまう点だ。

集める経路を変えれば、集まる顔ぶれは変わる。たとえば SNS で公募すれば、その SNS をよく使う人に偏る。謝礼の額や見せ方も、応じる人の層を静かに歪める。集まった人たちは「世の中の縮図」ではなく、「あなたの集め方が引き寄せた人たち」でしかない。

もう一つは、回答者側の事情だ。謝礼のある調査ばかりに何度も応じる、いわゆるプロ回答者がいる。彼らは何を答えれば通過できるかを学習しているため、条件質問に都合よく合わせ、虚偽の申告で参加してくることもある。条件を素直に問うほど、その隙は大きくなる。本人確認や事前面談などで弾く運用はあるが、完全には防げない。

参加した人数は数えられる。けれど、その人たちが本当に届けたい相手だったかどうかまでは、人数は教えてくれない。

リクルーティングは、調査が始まる前の調査である

調査というと、集めた声をどう読むかに目が行きやすい。

ただ、本当の分岐点は、もっと手前にある。誰を集め、誰を集めなかったかを決めた瞬間に、その後に聞こえてくる声の輪郭は、もう決まっている。

冒頭の 5 人も、そうだった。条件を決め、候補を選び、参加を頼んだあの段取りが、あとで聞こえてくる本音を静かに選び取っていた。

リクルーティングとは、何を聞きたいのかを、誰を選ぶかという形で先に決める作業である。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。