割付

割付とは、性別や年代といった属性ごとに集める人数をあらかじめ決めておき、その枠が埋まるまで回答を回収するサンプリングの手法です。

割付を具体例で理解する

20 代から 60 代までの男女に、ある商品の認知度を聞きたいとする。

何も指定せずに 1,000 人集めると、たまたま回答してくれた人の偏りがそのまま出る。たとえば 50 代女性ばかり 400 人、20 代男性は 30 人、という形になりやすい。これでは「20 代男性にどう見られているか」を語るには心もとない。

そこで、回収する前に枠を決める。

「20 代男性 100 人、20 代女性 100 人、30 代男性 100 人……」というように、性年代ごとに集める人数を割り当てておく。回答が集まる過程で、すでに埋まった枠(たとえば 50 代女性)はそこで締め切り、まだ足りない枠(20 代男性)だけを集め続ける。

この、属性ごとに人数の枠を決めて回収することが割付である。

割付の仕組み

割付では、まず母集団をいくつかの属性で区切り、それぞれの枠に何人を割り当てるかを数える。次に回収の段階で、各枠が指定人数に達したかを判定し、達した枠は閉じる。

枠の決め方には、大きく二つある。

ひとつは、すべての枠に同じ人数を入れる均等割付。20 代も 60 代も同じ 100 人ずつにする。少人数の層でも比較できる人数を確保したいときに使う。

もうひとつは、母集団の構成比に合わせて人数を配分する構成比割付(人口比)。日本の人口で 20 代が 15%、50 代が 18% なら、回収もその比率に近づける。全体の数字を実際の人口の姿に寄せたいときに使う。

割付は何に使うのか

割付は、たとえば次のような場面で使う。

  • 特定の層(20 代男性など)について、語れるだけの標本サイズを確保したいとき
  • 性年代の偏りを抑えて、層ごとの違いを公平に比較したいとき
  • パネルから効率よく対象者を集め、回収状況を管理したいとき

均等割付と構成比割付のどちらを選ぶかは、見たいものによる。層ごとに切って比べたいなら均等割付、全体を一つの数字として人口の縮図に近づけたいなら構成比割付が向く。両方を組み合わせ、均等に集めたうえで集計時にウェイトバックで構成比に補正する、という分担もよく取られる。

割付でわからないこと

ここがいちばん大事なところだ。割付は無作為抽出ではない。

無作為抽出は、母集団の一人ひとりが選ばれる確率を保ったうえで標本を引く。だから標本誤差を推計でき、信頼区間という「どれくらいぶれるか」の前提が成り立つ。割付は枠を埋めることを優先し、枠の中では確率的に選んでいない。つまり、信頼区間や標本誤差の前提を厳密には満たさない。数字は出せても、その精度を確率の言葉で保証はできない。

もうひとつ。割付でそろえられるのは、あくまで指定した軸だけだ。性年代を母集団に合わせても、職業・居住地・関心の強さといった指定していない軸の偏りは残る。枠が埋まった層に、集めやすい人ばかりが入り込む余地もある。

そろっているのは、指定した軸の見た目だけである。

割付とは、代表性への近道であって、保証ではない

実務では時間も予算も限られる。母集団から完全な無作為抽出をするのは、多くの調査で現実的ではない。だからこそ割付が使われる。性年代をそろえるだけで、数字はぐっと「それらしく」なる。

でも、そろった見た目は、正しさそのものではない。

割付とは、限られた条件のなかで代表性に近づくための、現実的な近道だ。近道だと知っていれば、出てきた数字を過信せず、指定していない軸に偏りが隠れていないかを問い直せる。

そろえた枠の向こうに、まだ見えていない人がいる。その想像を手放さないことが、割付を正しく使うということだと思う。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。