プロンプト

プロンプトとは、生成 AI に与える指示文のことで、同じ AI でも、何をどう頼むかによって返ってくる出力の質が大きく変わる、その頼み方そのものを指します。

プロンプトを具体例で理解する

3,000 件の自由回答を AI に分類してもらいたい、とする。

「この自由回答を分類して」とだけ頼むと、AI は適当な切り口でざっくり分けて返してくる。粒度もばらばらで、そのままでは資料に使いにくい。

頼み方を変えてみる。

「以下の自由回答を、不満の対象(価格/品質/対応)で分類し、各分類の代表的な原文を 3 件添えて、表形式で出してください」。目的、分類の軸、出力の形、欲しい例の数を、こちらが先に決めて渡す。

返ってくるものが、ぐっと使える形に変わる。

同じ AI に、同じデータを渡しているのに、結果が違う。その差を生むのが、プロンプトである。

プロンプトの仕組み

生成 AI、とくに大規模言語モデルは、受け取った文章の続きとして、統計的にもっともらしいテキストを生成する。プログラムのような特別な記法ではなく、ふだんの日本語や英語で書いた指示が、そのまま入力になる。

だから、入力が曖昧なら出力も曖昧になる。何を、どんな観点で、どの形で欲しいのかが書かれていなければ、AI はそれを推測で埋める。プロンプトを設計するとは、その推測の余地を減らし、欲しい出力に近づける作業だといえる。

プロンプト設計の勘所

うまく頼むコツは、おおむね次の四つに整理できる。ただし、全部を盛ればよいわけではない。

  • 役割と目的を書く(「あなたはリサーチャーです。次の不満を分類する目的で」)。何のための作業かが決まると、出力の方向が安定する。
  • 出力の形式を指定する(表で、箇条書きで、項目はこの順で)。後工程で使う形が決まっているときほど効く。
  • 判断基準や例を与える(この語はこちらに分類、迷う場合はこう)。分類や評価のように、線引きが必要な作業で効く。
  • 曖昧な語を避ける(「いい感じに」「適切に」を、具体的な条件に置き換える)。解釈の幅が広い指示ほど、結果はぶれる。

何を効かせるかは、頼む作業しだいだ。形式の指定は整形作業に、基準や例は分類・評価に、とくによく効く。

プロンプトでも変えられないこと

良いプロンプトは、出力を安定させ、精度を上げる。ただし、できることには境界がある。

ひとつは、ハルシネーションや訓練データの偏りを、頼み方では消せないこと。ある査読研究も、役割を指定するプロンプトで偏りを部分的に和らげられるとしつつ、AI は学習データに含まれる偏見や誤りをそのまま引き継ぐ、と指摘している。どの集団の声が薄まるかまでは、頼み方では決められない。

もうひとつは、結果の頑健性が低いこと。同じ趣旨でも、言葉づかいの小さな違いで出力は動く。ある研究では、プロンプトの与え方や問い合わせた時期によって結果が変動し、実際の調査と比べて、AI が出した数字の約半分が偶然では説明しにくい差(有意差)でズレた。同じプロンプトでも、モデルが更新されれば返答は変わりうる。

つまり、プロンプトは出力を寄せる舵ではあっても、答えを固定する錠ではない。

プロンプトとは、魔法の呪文ではなく指示書である

プロンプトと聞くと、知る人だけが使える「魔法の呪文」を思い浮かべるかもしれない。

でも、その正体は指示書だ。何を確かめたいかが自分の中で曖昧なら、どれほど名文のプロンプトを書いても、返ってくるのは曖昧な答えである。

だから、まず磨くべきは言い回しではない。

何を知りたいのか、という問いのほうである。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。