自由回答(FA)

自由回答(FA)とは、選択肢を用意せず、回答者に自分の言葉(文章や数値)で答えてもらう回答形式です。フリーアンサーとも呼ばれ、単一回答や複数回答といった「選ばせる」形式の対になります。

自由回答を具体例で理解する

新サービスのアンケートを作るとする。解約した人に理由を聞きたい。

選択肢を並べる手もある。「価格」「機能不足」「他社に乗り換え」……。集計は一瞬で終わる。

ただ、用意した選択肢に答えがなかったらどうだろう。「思っていたのと違った」という人は、どの欄を選ぶのか。

そこで、こう聞く。

「解約を決めた理由を、ご自由にお書きください」

返ってくるのは、一人ひとりちがう文章だ。想定していなかった声も混じる。これが自由回答である。こちらの枠に押し込めず、相手の言葉のまま受け取る形式だ。

自由回答の仕組み

聞き方は大きく二つある。

一つは、意見や理由を文章で書いてもらう形式。「なぜそう思いましたか」のように、選択肢を想定しきれない、あるいは想定そのものを疑いたいときに開く。

もう一つは、数量を数字で答えてもらう形式だ。来店回数や利用時間のような量は、「週 1 回未満/1〜3 回/4 回以上」と区切って選ばせるより、そのまま数字で書いてもらうほうがよい場面が多い。区切り方そのものが回答を引っ張ってしまうためだ(Krosnick, 2009)。

文章で集めた回答は、そのままでは数えられない。似た内容ごとに分類して番号を振るアフターコーディングを通すか、テキストマイニングで語の傾向を見て、はじめて集計にのる。

いつ開いて、いつ閉じるか

自由回答と、単一回答複数回答のような選択式。どちらが上ということはなく、知りたいことで選ぶ。

開くのが向くのは、答えの選択肢が事前に見えていないとき、想定外の声を拾いたいとき、理由やニュアンスを深く知りたいときだ。実際、用意した選択肢が回答者の挙げたい対象を取りこぼすと、項目の順位そのものが選択式と食い違うことがある(Schuman & Presser, 1981)。本調査の前に自由回答で答えを集め、それを材料に選択肢を組み立てるプリテストの使い方もある(Krosnick, 2009)。

閉じるのが向くのは、聞きたいことが固まり、人数や割合で素早く比べたいときだ。

ここで効いてくるのが回答者の心理である。自分の言葉で書くのは、選択肢を選ぶよりずっと骨が折れる。負担が大きいと、人は最小限の労力で済ませようとする「満足化」に流れ、無回答や短い答えが増えやすい(Krosnick, 2009)。負担の大きい自由回答は、できるだけ後ろに置きたい。

自由回答でわからないこと

自由回答は豊かだが、そのままでは定量的に比べにくい。

書くのが得意な人、意欲の高い人ほど多くを語り、面倒だと感じた人は黙る。集まった声は、回答者全体の縮図とは限らない。「この不満が多く書かれていた」は、「多くの人がそう感じている」とイコールではないのだ。

そして文章を分類した時点で、結果は回答そのものではなく、誰かが下した分類になる。同じ「価格が理由」でも、軽い一言と長く書き連ねた怒りは、同じ枠に丸められる。

自由回答から読み取れるのは、声の有無や厚みであって、その分布の正確な大きさではない。

自由回答とは、こちらの枠を一度外すこと

選択肢を作るとは、答えをあらかじめ決めておくことだ。速くて、比べやすい。けれど、用意した枠の外にあるものは、最初から見えない。

自由回答は、その枠を一度外す形式である。だからこそ、想定していなかった声が入ってくる。

その代わり、書く負担は回答者に乗る。問うべきは「自由に書いてもらえば本音が出るか」ではない。

何を、どこまで開いて聞くのか。

すべてを開けば、負担に潰れて空欄が並ぶ。要を一つだけ開き、残りは選ばせる。

自分の設問に、用意した選択肢の外の声が入る余白は、どこか一箇所でもあるだろうか。

その一つを空けておくことが、自由回答の設計だと思う。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。