標準偏差

標準偏差とは、データが平均のまわりにどれくらい散らばっているかの大きさを表す指標です。平均が分布の「まん中あたり」を示すのに対して、標準偏差は、そのまん中からデータがどれだけ広がっているかを示す。記号は σ や SD と書く。

「平均 3 日でお届け」が同じでも、届く日の散らばりは会社で違う

同じ「平均 3 日でお届け」をうたう配送会社が、2 社ある。

A 社は、たいてい 2〜4 日で届く。早い日も遅い日も、まん中の 3 日から大きくは外れない。B 社は、運がよければ当日、悪ければ 1 週間かかる。ならせば、やはり平均 3 日だ。

平均だけを見れば、この 2 社は「同じ」に見える。どちらも 3 日。けれど、注文する側の体験はまるで違う。A 社は予定が立つ。B 社は、届くまで読めない。

この「平均は同じなのに、広がり方が違う」を 1 つの数字にしたのが標準偏差だ。散らばりの小さい A 社は標準偏差も小さく、大きい B 社は大きい。

各値と平均の差を二乗して平均し、平方根で元の単位に戻す

出し方は、芯だけ押さえておけばいい。

まず、一つひとつの値が平均からどれだけ離れているかを見る。この「値 − 平均」を偏差と呼ぶ。偏差には平均より上ならプラス、下ならマイナスの符号がつき、そのまま足すと打ち消し合って 0 になる。そこで二乗して符号を消し、その平均を取る。これが分散だ。

ただ、二乗したままでは単位も二乗されて(「日」が「日の二乗」に)実感と結びつかない。最後に平方根を取り、元の単位(日、点、円)へ戻したものが標準偏差だ。

だから標準偏差は、ざっくり「各値が平均からどれくらい離れているかを、ならした距離」と読める。小さいほど平均の近くに集まり、大きいほど広く散らばっている。

平均が同じでも、標準偏差が違えば別の分布を見ている

標準偏差がいちばん働くのは、平均だけでは見えない差をあらわにするときだ。さきの配送会社のように、平均が同じでも標準偏差が違えば、中身の異なる 2 つの分布を見ていることになる。平均が近い数字どうしを比べるときこそ、散らばりを並べる意味がある。

裏を返せば、指標を決める段階で「知りたいのは中心なのか、散らばりなのか」を先に選んでおきたい。配送の速さなら平均で足りるが、「当てにできるか」を問うなら、測るべきは散らばりのほうだ。品質の安定も、納期のぶれも、中心より広がりが効く場面は少なくない。そこで平均だけを報告すると、いちばん見たかった違いが数字から抜け落ちる。

標準偏差は、単独では意味を結びにくい。いつも平均値とセットで並べて初めて、分布のおおまかな姿が立ち上がる。

外れ値に引っ張られやすく、「約 68% が ±1 SD」は正規分布のときだけ成り立つ

一方で、標準偏差には気をつけたい癖が二つある。

一つは、外れ値に弱いこと。計算の途中で偏差を二乗するため、平均から遠い値ほど効き方が跳ね上がる。たった一つの極端な回答が、標準偏差を大きく押し上げてしまう。数字が大きいときは、全体が散らばっているのか、一部の外れ値が引き伸ばしているだけなのかを、生データで確かめたい。平均も標準偏差も外れ値に引っ張られるので、外れ値に強い中央値と見比べると、そのズレが手がかりになる。

もう一つは、「平均から標準偏差 1 つ分の範囲に、データの約 68% が入る」という有名な目安(68・95・99.7 のルール)だ。これは、データが左右対称のきれいな山(正規分布)に従うときにだけ成り立つ近似にすぎない。年収や配送時間のように分布が片側へ裾を引いていると、この 68% は当てにならない。どんなデータにも通じる法則のように振り回すと、読みを外す。

標準偏差は、平均が隠したばらつきをもう一度おもてに出す

平均は、たくさんのばらつきを 1 つの値にたたんでくれる。けれど、たたんだぶん、そこにあった幅は隠れる。標準偏差は、それをもう一度おもてに出す数字だ。

同じ「平均 3 日」の約束でも、当日から 1 週間までの落差があるのか、2〜4 日に収まる安定なのか、その中身はまるで違う。

だから、報告書で平均を見つけたら、その隣にもう一つ問いを置きたい。この平均は、どれくらい信じていい平均なのか。散らばりを確かめないまま、まん中の 1 点だけで判断を決めていないだろうか。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。