単一回答(SA)

単一回答(SA)とは、用意した選択肢の中から、回答者に最も当てはまるものを一つだけ選んでもらう回答形式です。Single Answer の頭文字で、Web アンケートではラジオボタンで表示されることが多い。

単一回答を具体例で理解する

化粧品ブランドのアンケートを作るとする。

「この商品を最初に知ったきっかけは何ですか」と聞き、テレビ CM、店頭、SNS の投稿、友人のすすめ、検索で見つけた、と選択肢を並べる。

ここで一つだけ選んでもらうのが単一回答だ。回答者は、自分にとっていちばん大きかった入口を一つに絞る。集計すると「SNS が 35%、店頭が 28%」と、きっかけの構成比が出る。

「当てはまるものをすべて」にすれば答えは変わる。だが今知りたいのは「主な入口はどこか」だ。選択肢どうしが両立しない問いなら、単一回答が素直に効く。

単一回答の仕組み

単一回答が成り立つ条件は、二つだ。

一つは、選択肢が相互排他であること。「20 代」と「学生」を同じリストに混ぜると、両方に当てはまる人が選べなくなる。

もう一つは、選択肢が網羅的であること。当てはまる答えが一つもない人を出さないよう、「その他(自由記述)」と「あてはまるものはない/わからない」の受け皿を最後に置く。これがないと、行き場を失った回答が近くの選択肢へ無理に流れ込む。

割合の合計は 100% になる。一人が一票だからだ。だから単一回答は構成比(シェア)を見るのに向いている。なお選んだ結果は、順番のないラベル、つまり名義尺度のデータになる。

どれを一つに選ばせるか

単一回答を使うと決めたら、次に効くのは選択肢の並べ方だ。これは見た目の問題ではなく、回答者の心理が答えを静かに歪めることがある。

人は、すべての選択肢をていねいに吟味するとは限らない。考えるのが面倒なとき、「ほどほどに当てはまる最初の一つ」で済ませてしまう。これは満足化(サティスファイシング)と呼ばれ、Krosnick らが繰り返し指摘してきた。

その結果、並び順で選ばれやすさが変わることがある。画面で読ませる Web アンケートでは上のほうが選ばれやすく(初頭効果)、口頭や電話で読み上げる調査では最後に聞いた選択肢が残りやすい(新近効果)。順番を変えただけで割合が動くなら、それは本音ではなく並びを測っている。

だから、選択肢の順番をランダムに入れ替えるなどの対処を設計時に決めておく。そして、複数当てはまりうる問いに単一回答を使わないこと。それは設計のミスではなく、問いの取り違えだ。

単一回答でわからないこと

単一回答の最大の限界は、一つに絞らせることそのものにある。

最初の入口を選んでもらっても、実際には「CM で見て、店頭で確かめた」人がいる。好きなブランドを一つ選んでもらっても、本当は甲乙つけがたい二つを抱えている人がいる。単一回答は、その複数の本音や気持ちの強さの差を、最初の一票に押し込めて捨ててしまう。

集計表の「SNS が 35%」は、きれいに見える。けれどそれは「ほかは関係なかった」という意味ではない。一つに絞らせた結果、そう見えているだけだ。

複数の入口を同時に拾いたいなら回答形式を変える必要があるし、気持ちの強さを段階で測りたいならリッカート尺度のほうが向いている。単一回答は、あくまで「一つに絞ったときに何が首位か」を映す道具だ。

単一回答とは、捨てることで見えるものを選ぶこと

一つに絞らせるのは、回答者に決断を迫る行為だ。その瞬間、二番目以降の答えはデータから消える。それでも絞ってもらうのは、構成比という迷いのない地図が手に入るからだ。誰の何が首位なのか。クロス集計で年代や性別に分ければ、その地図はさらに細かくなる。

ただ、その 35% は、ほかを捨ててもらった上での 35% である。だから設問を作るときは、一つに絞らせる前に問い返してほしい。この設問で何を見たいのか、そのために何を捨てるのか。そこを先に決めてから、選択肢を並べることだと思う。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。