SD法
SD法とは、「良い—悪い」「強い—弱い」のように対になる形容詞を両端に置いた数段階の尺度で、ブランドや概念など対象から受ける印象(イメージ)を多面的に測る評定方法です。
SD法を具体例で理解する
自社ブランドの「イメージ」を調べたい、という依頼が来たとする。
「好きですか?」と 5 段階で聞けば、好かれているかはわかる。でも、どんなふうに受け取られているかは、まだ見えない。
そこで、対象は「当社ブランド」一つに固定し、両端に逆の意味の形容詞を置いた行をいくつも並べる。
「親しみやすい ─・─・─・─・─ よそよそしい」 「先進的な ─・─・─・─・─ 古くさい」 「高級な ─・─・─・─・─ 安っぽい」
回答者は、各行で感じた位置に印をつける。点をつなぐと、ブランドの「横顔」が一本の折れ線(プロフィール)として浮かび上がる。これが SD 法だ。競合に同じ尺度を当てれば、二本の線の開きが、そのまま立ち位置の違いになる。
SD法の仕組み
考案したのは心理学者の Charles Osgood らで、1957 年の著作 “The Measurement of Meaning” にさかのぼる。言葉や対象が人に喚起する情緒的な意味=イメージを、対の形容詞で挟んで測ろうとした。
多数の形容詞対への回答を因子分析(多くの項目の背後にある共通の軸を探す手法)にかけると、評価性(よい—わるい)・力量性(つよい—よわい)・活動性(活発な—不活発な)という 3 つの軸(まとめて EPA)に集約されやすいと知られる。この枠組みは、印象が大づかみに「好き嫌い」「強さ」「動き」で捉えられることを示している。
似た形式のリッカート尺度は「この商品は使いやすい」といった命題への同意の程度を測る。一方 SD 法は、命題ではなく対象そのものの印象を、複数の形容詞対で多次元に測る。測りたいのが賛否の強さなのか、像の輪郭なのかで、選ぶ形式が変わる。
何段階にするか、形容詞対をどう選ぶか
SD 法を設計するとき、決めるのは段階の数と、形容詞対の中身だ。
- 段階数:5〜7 段階が標準。細かく刻むほど精密に見えるが、人は隣り合う段を区別しきれなくなり、かえってばらつくことがある。
- 形容詞対:両端は本当に反対の意味の語にする。「明るい」の逆を「暗い」とするか「地味」とするかで、回答は別物になりうる。測りたいブランドヘルスやコンセプトに合う対を、言葉の専門家とも詰めて選ぶ。
回答者の心理も効く。位置に言葉のラベルがない分、SD 法は答えるのに抽象的な想像を要し、リッカート尺度より頭を使う傾向があるとされる。さらに、無難な真ん中に印が寄ったり、左右どちらの端に「よい」語を置いたかで答えが動いたりすることもある。良し悪しの向きを行ごとに入れ替えておくと、機械的な流し回答に気づきやすい。
SD法でわからないこと
SD 法の目盛りは、見た目ほど自由には扱えない。
各段階に振った数字は、実務では平均を出して比べることが多い。だが本来は順序の情報に近く、「親しみやすい=5、4」の 5 と 4 の差が、2 と 1 の差と心理的に同じ幅だという保証はない。平均の比較は、あくまで近似だと心得ておく。
そして EPA のような軸の名前は、データから自動で出てくるものではない。因子分析が示すのは数字のまとまりであって、それを「評価性」と名づけるのは分析者の解釈である。線の上下にどんな生活や感情があるのかも、SD 法だけでは語れない。
SD法は、印象に輪郭を与える
「好き」か「嫌い」かだけでは、ブランドの顔は見えてこない。親しみはあるのに古くさい、高級だけれどよそよそしい——その入り混じった像こそが、人の中にある本当のイメージだ。
SD 法は、その像に目盛りを当てて輪郭を描く方法である。だから設計で問うべきは、「どんな形容詞を並べるか」の前にある。
この調査で、対象のどんな横顔を見たいのか。
競合とどの軸で違っていたいのか。それを先に決めておくと、並べるべき形容詞対は自然と絞られていく。
そうして描いた折れ線は、競合の線と重ねて読む。どの形容詞対で開くか——その開きが、つかみどころのないイメージに、比べられる輪郭を与える。