調査企画書

調査企画書とは、何のために何を調べるのかを発注の前に言語化し、調査の方針として調査会社と共有するための文書です。リサーチブリーフ、調査ブリーフとも呼ばれる。

外部の調査会社に依頼するとき、最初に渡すのがこの一枚だ。何を書いたかで、返ってくる調査の質はほとんど決まる。

調査企画書を具体例で理解する

新商品のコンセプトを評価したい場面を考える。案が三つあり、どれで進めるか決めかねている。そこで調査会社に「コンセプト評価をお願いします」と相談する。だが、これだけでは相手は動けない。どんな調査を組めばいいか、判断する材料がないからだ。

ここで企画書を書く。たとえば、こう整理する。

「秋に発売する新商品の最終案を一つに絞りたい。三案のうち、20 代から 30 代の女性が最も『自分のために作られた』と感じるのはどれか、それはなぜかを知りたい。発売判断の会議は来月末で、予算は◯◯万円」

背景があり、決めたいことがあり、問いがあり、対象と締切と予算がある。これが書けて初めて、調査会社は「ならこの設計です」と返せる。漠然と「評価したい」と言うのとは、返ってくる提案がまるで違う。

調査企画書に何を書くか

調査企画書の中身は、おおむね次の要素で組み立てる。

  • 背景:なぜ今このリサーチが必要になったのか、いまわかっていることは何か
  • 意思決定:この結果を受けて、何を・いつ決めるのか
  • 目的と問い:その判断のために、何を明らかにするのか
  • 対象:誰の声を聞きたいのか
  • 成功条件・制約:予算、スケジュール、納品物

並べると項目表に見えるが、芯は一本だ。意思決定があって、それに答えるリサーチクエスチョンが決まり、そこから対象や問いが逆算される。良い企画書は「この調査で何を決めるか」がはっきり書かれている。

ここで手法を決め打ちしないことも大事だ。定量か定性かは、目的と問いが固まったあと、それに答えられるほうを選ぶ。「アンケートをやりたい」から書き始めると、目的が後づけになる。

発注側が書く部分、調査会社と詰める部分

企画書のすべてを発注側が一人で書き切る必要はない。

発注側が責任を持つのは、上流だ。背景、決めたいこと、知りたい問い、対象のイメージ。ここは社内の事情を知る発注側にしか書けない。手元に仮の答え、つまり仮説があれば、添えておくと相手は的を絞りやすい。

一方、具体的な手法、サンプル数、設問の作り方、スケジュールの現実性は、調査会社と詰める領域だ。上流さえ明確なら、下流の専門的な判断は任せられる。逆に上流が曖昧なまま下流を始めると、立派な設計図が、何のためのものか分からないまま組み上がる。

調査企画書でわからないこと、外しやすいこと

企画書を書いても、それで調査の答えが出るわけではない。むしろ、ここでつまずくと調査全体がぶれる。

第一に、企画書が曖昧だと、その曖昧さは下流すべてに伝染する。目的がぼやけたまま組まれた調査は、データは集まるのに「で、どうする」が決まらない。第二に、手法を先に決め打ちすると目的とずれる。「グループインタビューをやる」と決めてから目的を考えると、本当は数で測るべき問いを言葉で聞いてしまう。第三に、立派な書類でも意思決定に接続していなければ意味がない。「何をするか」だけが並び、「何を決めるのか」が抜け落ちる。書類の完成度と、調査の有用さは別物だ。

そして、企画書という道具そのものにも射程がある。上流を固めても、下流の手法選択や設問次第で外れる余地は残る。良い企画書は良い調査の必要条件であって、十分条件ではない。

調査企画書とは、他社に渡す一枚の地図である

調査会社は、あなたの社内の文脈を知らない。だからこそ、何を見たいのかを地図にして渡す必要がある。ここを発注側が書ききれば、調査全体もおおむね意思決定に効くものになる。

次に外部へ依頼するときは、設問やスケジュールに入る前に、「この調査で何を決めるのか」を一行だけ書いてみてほしい。

その一行が、自分の迷いを言葉に変え、相手と同じ地図を見るための、最初のしるしになる。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。