比例尺度

比例尺度とは、目盛りの間隔が等しく、かつ「ゼロは何もない」を意味する絶対的な原点を持つため、四則演算も比(倍数)も意味を持つデータの種類です。比率尺度とも呼ばれます。

ある設問が、後で効いてくる

新サービスのアンケートを作るとする。「ふだんの利用金額」をたずねたい。

ここで、つい選択肢で聞いてしまう。「1. 千円未満、2. 千〜三千円、3. 三千〜五千円、4. 五千円以上」。回答者は選ぶだけで楽だし、集計の表もきれいに並ぶ。

ところが分析の段で、上司がこう言う。「結局、平均いくら使ってるの? 客単価を出して」。

出せない。手元にあるのは「2 を選んだ人が 40%」という区分の人数だけで、一人ひとりがいくら払ったかは、もうどこにもない。もし最初から金額そのものを数字で記入してもらっていれば、平均も、合計も、「上位層は下位層の何倍使うか」も、すべて出せた。

この差を生むのが、尺度の選び方である。

なぜ比例尺度だと、何でも計算できるのか

測定の物差しを 4 つに整理したのは、心理学者の S.S. スティーブンスが 1946 年に発表した論文だった(Science 誌)。彼は、世の中の数字を名義・順序・間隔・比例という、性質の違う 4 つの水準に分けた。

比例尺度は、その一番上にいる。

ポイントは、原点のゼロが「本物」だということに尽きる。ゼロが「無」を指す——金額がゼロなら一円も払っていないし、所要時間がゼロなら一秒もかかっていない。このゼロがあるから、初めて「10 万円は 5 万円の 2 倍」と、比(倍数)で語れる。

すぐ下の間隔尺度(目盛りは等間隔だが、ゼロが基準点でしかない尺度。摂氏の気温や西暦の年がそれだ)と分かれるのは、まさにここである。気温 20 度は 10 度の「2 倍暑い」とは言えない。0 度は寒さの無ではないからだ。一方、売上 20 万円は 10 万円のちょうど 2 倍だと言い切れる。

真のゼロを持つ。だから、比が語れる。

どこまで言えるか

比例尺度は、4 つの水準で最も情報量が多い。だから、使える代表値や統計に制限がほとんどない。平均値中央値も合計も、比率も、ひととおり意味を持つ。

身近な例で言えば、売上金額、人数、年齢、購入回数、所要時間、長さや重さ。これらは記入式で「実数」を取れば、後からどんな角度でも切れる。

ただし、情報量が多いことと、その数字を正しく読むことは別だ。たとえば平均は外れ値に弱く、桁違いの一人に引っ張られる。比例尺度だから安全、なのではない。物差しとして上等なだけで、解釈の落とし穴は依然として残る。

比例尺度でいちばん大事な留意

最重要の一線は、これだ。高い水準の尺度は低い水準に変換できるが、その逆はできない。

金額という比例尺度のデータは、後から「千円未満/千円以上」と区分(順序尺度)にまとめ直せる。情報は、いつでも落とせる。けれど、最初から区分で聞いてしまったものを、後から元の金額に戻すことはできない。捨てた情報は、復元できない。

冒頭の客単価が出せなかったのは、設計の段でこの非対称を踏んだからだ。「年齢」を 20 代/30 代の階層で聞けば順序尺度に落ち、平均年齢も「上位層は何倍」も取れなくなる。聞き方ひとつで、後の分析で使える手がまるごと変わる。

迷ったら、高いほうで取っておく。それが、比例尺度を扱うときの構えだと思う。

比例尺度とは、未来の問いに答えを残す器である

設問を作るとき、私たちはつい「答えやすさ」と「集計のしやすさ」で選択肢を区切りたくなる。区分にすれば、回答者も楽だし、表も整う。

でも、その整った表は、聞いた瞬間に答えられる問いにしか答えられない。

その数字は、半年後に上司が投げてくる「結局いくら? 何倍?」に、まだ答えられるだろうか。

比例尺度が未来の問いに答えを残せるのは、設計の段で生の量そのものを記入式で取っておいたときだけだ。区分に丸めた瞬間に、その器は空になる。だからこそ、設問を作るときに一度立ち止まる。この設問は、いま楽をするためのものか、それとも後で考えるためのものか。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。