順序尺度
順序尺度とは、回答に順位や大小の順序はあるけれど、隣り合う段階どうしの間隔が等しいとは限らないデータの種類です。
順序尺度を具体例で理解する
満足度を「とても満足・やや満足・どちらともいえない・やや不満・とても不満」の 5 段階で聞いたとする。
集計のために、上から 5・4・3・2・1 と数字を振る。ここまでは自然な作業だ。
そして報告書に、こう書く。
「満足度の平均は 3.8 でした」
数字が出ると、なんとなく前に進んだ気がする。でも、ひとつ立ち止まりたい。「とても満足」と「やや満足」の差は、「やや不満」と「とても不満」の差と、本当に同じ大きさだろうか。
人の気持ちは、そんなにきれいな目盛りで並んでいない。順序はある。でも幅は揃っていない。これが順序尺度だ。
順序尺度の仕組み
データの種類を整理する考え方は、心理学者の S.S. スティーブンスが 1946 年に提案した 4 つの「尺度水準」に遡る。順序尺度はその一つだ。
骨格はシンプルで、値どうしの間に成り立つ関係が「どちらが上か・下か」までだ、という点にある。所得階層、学年、満足度の段階、レースの順位。どれも順序はつくが、1 位と 2 位の差と、4 位と 5 位の差が等しいとは言えない。
順序が加わる点で、ただ種類を分けるだけの名義尺度より一段くわしい。一方で、目盛りが等間隔だと約束する間隔尺度には届かない。順序尺度は、その「あいだ」にいる。
順序尺度をどう判断に使うか
順序尺度を前にしたとき、迷うのは「この数字で何をしていいのか」だ。目安は、順序という情報だけで成り立つ手当てを選ぶこと。
代表値としては、まん中の順位にあたる中央値や、いちばん多い段階(最頻値)がなじむ。ばらつきを見るなら、四分位や百分位で「上位・下位がどのあたりか」を押さえる。順位どうしの関係を測りたいときは、スピアマンの順位相関のように順序ベースの方法がある。
ただ、実務でいちばん効くのは、もっと素朴な見方かもしれない。「満足が何 % 、不満が何 % 」と割合でながめることだ。段階を足し引きせずに、分布の形をそのまま見る。多くの場面で、平均よりも誤解が少ない。
順序尺度でわからないこと
順序尺度の最大の落とし穴は、間隔が等しいかのように平均してしまうことだ。
「平均 3.8 点」という一行は、隣り合う段階の差がすべて同じ幅だと仮定した、近似でしかない。その仮定が崩れていれば、3.8 という数字は、足してはいけないものを足した結果になる。会議でこの平均が独り歩きし、「去年より 0.2 上がった」と語られはじめると、ずれは静かに大きくなっていく。
なお、この「平均してよいか」をめぐっては統計家の間でも見解が割れていて、複数の項目を束ねたリッカート尺度では慣習的に平均をとることもある。それでも、一つの設問の段階をそのまま平均する前には、一度ためらう価値がある。
順序尺度とは、順番は知っているが距離は知らない数字
順序尺度は、並び順を教えてくれる。でも、その間隔までは教えてくれない。
つまずきは、数字が振られた瞬間に起きる。5 と振った途端、私たちはそれを 5 として計算したくなる。けれど、もとは「とても満足」という言葉だったはずだ。
だから問うべきは、「平均は何点か」ではない。
この段階の差を、等しいものとして扱っていいのか。
そこに一度立ち止まれるかどうかで、同じ回答から読み取れるものは変わってくる。順序尺度とは、順番は知っているが、距離までは知らない数字である。