名義尺度

名義尺度とは、性別や血液型、居住地のように、対象を分類・ラベル付けするためだけに使う、大小や順序を持たないデータの種類です。

ある集計表の落とし穴

購入チャネルを聞くアンケートを作ったとする。回答は「1. 店頭、2. EC サイト、3. 電話」。集計を楽にするため、選択肢に番号を振った。

ここまでは、よくある光景だ。

ところが分析の段で、誰かが「チャネルの平均は 1.8 でした」と書いてくる。数字が並んでいるのだから、足して割れば平均は出る。出はするのだが、その 1.8 はどこにも存在しない。店頭と電話のちょうど中間にある購入方法など、ない。

この番号は、量ではない。ただの名札だ。

これが名義尺度のつまずきやすいところである。

なぜ計算してはいけないのか

そもそも測定の尺度を 4 段階に整理したのは、心理学者の S.S. スティーブンスが 1946 年に発表した論文だった。彼は、世の中の測定は名義・順序・間隔・比例という性質の異なる物差しに分かれる、と説いた。

このうち名義尺度がやっていることは、分類だけだ。

対象をいくつかの箱に仕分けて、それぞれに名前をつける。男性か女性か。A 型か O 型か。店頭で買ったか EC で買ったか。箱と箱の間に「どちらが上か」という関係はない。だから「1. 店頭」に振った 1 という数字は、識別のためのコードであって、2 の半分という意味は持たない。

順序がなく、間隔もない以上、足し算も平均も成り立たない。名義尺度で意味を持つのは、等しいか・違うかという判定だけだ。

どう判断に使うか

計算ができないなら役に立たないのか、というと逆である。名義尺度は「どのグループがどれだけいるか」を語るのに向いている。

許される代表値は、最も多かったカテゴリを指す最頻値だ。要約は、各カテゴリの度数(人数)と割合で行う。「店頭が 45%、EC が 40%、電話が 15%」——これが名義尺度の自然な見せ方になる。

差を確かめたいときは検定も使える。たとえば年代と購入チャネルに関係がありそうか、カイ二乗検定で調べる、といった具合だ。実際、名義尺度どうしはクロス集計と相性がよく、「どの層がどの箱に偏っているか」を読むのが定石になる。

名義尺度は、平均ではなく多数で語る

順序のあるリッカート尺度なら、乱暴ながら平均値を出すこともある。けれど名義尺度では、その近似すら許されない。番号はラベルであって、大小ではないからだ。

設計のときに、この一線を引いておきたい。この設問は、量を測りたいのか。それとも、人を分類したいのか。

分類したいのなら、答えは平均の中にはない。読むべき数字はただ一つ、どの箱に何人いるか、である。

名義尺度が名前のついた仕切りとして働きだすのは、そう数えたときだ。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。