多変量解析

多変量解析とは、3 つ以上の変数を同時に扱い、変数どうしの関係やデータの構造を読み解く、統計的な分析手法の総称です。

多変量解析を具体例で理解する

あるサービスの満足度を上げたい、という場面を考えてみる。

「満足度を上げたい」とだけ言われても、何から手をつけるかは決まらない。価格なのか、対応の速さなのか、使いやすさなのか。満足度は、たいてい複数の要因が同時に絡み合って決まる。

そこで、価格・対応・使いやすさといった複数の評価項目と、総合満足度をまとめて分析にかける。すると「満足度に最も効いているのは対応の速さで、価格の影響は思ったより小さい」といった関係が見えてくる。

ひとつの結果を、複数の原因の組み合わせから読み解く。これが多変量解析の出発点である。

単純集計・クロス集計との位置づけ

設問ごとの回答数や割合を出す単純集計は、変数を 1 つずつ見る。クロス集計は、年代と満足度のように 2 つの変数を掛け合わせて比べる。

多変量解析は、その先にある。3 つ以上の変数を一度に扱い、ある変数を残りの変数の組み合わせでどう説明できるか、あるいは多くの変数の裏にどんな構造があるかを調べる。変数が増えて手作業では追えなくなった関係を、計算で捉えるための道具だと考えるとわかりやすい。

目的から手法を選ぶ

多変量解析は、ひとつの手法ではなく手法の集まりである。だから「どれを使うか」は、機能の比較ではなく目的から決まる。

おおまかには、次の問いに対応している。

  • 何かを予測・説明したいのか → 重回帰分析。満足度や売上のような結果を、複数の要因で説明し、どの要因がどれだけ効くかを見る。
  • たくさんの設問を少数の軸に要約したいのか因子分析。多数の評価項目の背後にある共通の軸を探り、データを少数の意味に圧縮する。
  • 似た回答者をグループに分けたいのか → クラスター分析。回答の似ている人どうしをまとめ、顧客の型を見つける。

「予測したい」「要約したい」「分けたい」——求めているものが違えば、選ぶべき手法も変わる。手法を先に決めてデータを当てはめるのではなく、知りたいことを先に言葉にすると、使う手法は自然に絞られていく。

多変量解析でわからないこと

便利な反面、多変量解析は万能ではない。

第一に、扱う変数が増えるほど多くのサンプルが要る。回帰分析では、説明に使う変数 1 つにつき 10 件程度の回答が目安とされ、変数の数に対して回答が少ないと、推定は不安定になる。

第二に、説明に使う変数どうしが強く相関していると(多重共線性)、どの要因がどれだけ効いているのかがうまく分離できず、係数がぐらつく。手元のデータに合わせ込みすぎて、新しいデータでは当たらなくなる過剰適合も起きやすい。少ない回答で変数を盛り込むほど、この罠は深くなる。

そして最後に、出力された数字の意味を読むのは人間の仕事である。どの因子を何と呼ぶか、ある係数を重く見るかは、分析者の解釈であって、計算が決めてくれるわけではない。だからこそ、誤読も起きる。

多変量解析は、手法より先に問いを決める

ツールに数値を流し込めば、それらしい表やグラフはいくらでも出てくる。計算そのものは、道具が肩代わりしてくれる。

だからこそ、難しさは計算の外側に移っていく。

多変量解析でつまずく多くの場面は、手法の選択を間違えたからではなく、何を知りたいのかを決めないまま手法に飛びついたからだと思う。予測なのか、要約なのか、分類なのか。それが定まれば、手法は半分決まったようなものである。

だから、分析を始める前に一度立ち止まりたい。この表で、私は何を確かめたいのか。

その問いを言葉にできたとき、多変量解析は変数の山ではなく、たぐり寄せる一本の糸に変わる。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。