平均値
平均値とは、すべての値を合計して個数で割り、データ全体を 1 つの数で代表させる指標です。算術平均とも呼ばれます。
平均値を具体例で理解する
ある会社で、社員の満足度を 10 点満点でたずねたとする。
集計結果は「平均 7.4 点」だった。
悪くない数字に見える。ところが回答をひとつずつ並べると、9 点が 8 人、1 点が 2 人だった。多くの人は満足していて、少数が強く不満を抱えている。その 2 つの実態が、7.4 という 1 つの数字にならされて、見えなくなっている。
平均値は、こういうとき実感とずれる。
平均値の出し方
計算そのものは難しくない。回答をすべて足し、人数で割るだけだ。
先ほどの例なら、(9 × 8 + 1 × 2) ÷ 10 = 7.4。手元で出せる。
問題は計算ではなく、その 1 つの数字に何を語らせるかにある。
平均値で何を測り、どこまで言えるか
平均値が答えてくれるのは「全体をならすと、だいたいどのあたりか」という問いだ。ここを外すと読み違える。
- 外れ値に弱い。 平均はすべての値を等しく取り込むため、極端に大きい・小さい少数の値に引っぱられる。1 人の桁違いの回答が、全体の平均を動かしてしまう。
- 分布が歪むと、実感とずれる。 年収がわかりやすい。一部の高所得者が裾を伸ばすと、平均年収は多くの人の実感より高く出る。「平均的な人」がその額を稼いでいるわけではない。
- 順序尺度の平均は、本来あやうい。 5 段階の満足度のような尺度は、順番が決まっているだけで、「とても満足」と「満足」の間隔が「不満」と「やや不満」の間隔と等しい保証はない。間隔が等しいと仮定して初めて足し算・割り算が意味を持つので、平均 3.8 のような数字は、見た目ほど厳密ではない。
だから平均値は、中央値(小さい順に並べてちょうど真ん中の値)と併せて見るのがよい。両者が大きく離れていたら、それは分布が歪んでいるという合図だ。
平均値が隠してしまうもの
最も大事な限界は、平均値だけでは分布の形が見えないことだ。
同じ平均 7.4 でも、全員が 7 点前後に集まっている集団と、満足と不満に割れた集団とでは、打つべき手はまったく違う。平均は、その違いを 1 つの数字の下に隠してしまう。
平均値は、分布の形(ヒストグラムや中央値、ばらつき)と一緒に見て初めて、安心して使える。1 つの数字を、単独で信じないことだ。
平均値とは、託すと同時に手放す数字である
調査の報告では、平均値はいちばん登場しやすい数字だ。1 つの値で全体を言い切れるから、扱いやすく、伝わりやすい。
でも、ならすという行為は、同時に何かを消すという行為でもある。
その平均 7.4 点に、満足している人の声と、強い不満を抱えた少数の声を、同じ重さで溶かし込んでいないだろうか。
平均値とは、データ全体に 1 つの代表を立てる便利な道具であると同時に、その代表に何を託し、何を手放したのかを問い続けるべき数字である。だからこそ、平均を出したあとに「この平均は、誰の平均だろう」と一度立ち止まる。その一手間が、数字を報告から判断へ変えていく。