MaxDiff
MaxDiff とは、多くの項目から「最も良い」ものと「最も悪い」ものを選ばせ、項目どうしの相対的な優先度を推定する調査手法です。
MaxDiff は、福利厚生の 10 案を best と worst の選択だけで並べ替える
来期の福利厚生を絞り込みたい。候補は 10 個ある。住宅手当、リモート勤務手当、資格取得支援……どれも「あったほうがいい」。一つずつ「どれくらい必要か」を 5 段階で聞いても、ほとんどが上に丸をつけ、順位がつかない。
そこで聞き方を変える。10 案のうち 4 つだけを見せ、「いちばん欲しいもの」と「いちばん要らないもの」を選んでもらう。組み合わせを変えて何回か繰り返すと、一回ずつは端と端だけの答えでも、積み重ねで 10 案全体の並びが浮かぶ。これが MaxDiff だ。
best-worst scaling が、選択の積み重ねを相対的な優先度スコアに変える
もとは、Louviere が 1987 年に考案した best-worst scaling という方法だ。人は「どれが一番か」を点数で言うのは苦手でも、数個から「一番」と「最下位」を選ぶのは迷わずできる。選択を集めれば、順位は復元できる。
なぜ両端か。最も良いものと最も悪いものは、優先度の差がいちばん大きいペアだからだ。モデルは、回答者が全ペアのうち差が最大のペアを選ぶ、と考える。この「差が最大(maximum difference)」が MaxDiff の名前の由来だ。集まった選択は、多変量解析の一種である選択モデルでスコアに変える。厳密にはこのモデルを MaxDiff と呼ぶが、実務では手法全体の通称だ。
リッカート尺度だと全部「重要」に見える項目を、強制選択で順位づける
MaxDiff を選ぶ場面は、はっきりしている。項目を一つずつ評価してもらうと、みんな高評価に張りついて差がつかないときだ。リッカート尺度で重要度を 5 段階で聞くと、人は無難に高い点をつけがちで、20 個の機能候補が軒並み「4 以上」になり、どれを先に作るか決められない。
MaxDiff は、その逃げ場をなくす。一つのセットで必ず「一番」と「最下位」を選ばせるから、回答者はトレードオフを迫られ、差が出る。単一回答が一つだけ選ばせるのに対し、MaxDiff は上と下の両方を選ばせ、何セットも重ねる。
MaxDiff の設計は、項目数とセット数を負荷と精度のつり合いで決める
設計で決めるのは、主に三つの数字だ。全体の項目数、一つのセットに出す項目数、答えてもらうセット数。一セットは 4〜5 項目が扱いやすく、各項目が全体で数回ずつ偏りなく登場するようにセットを組む。登場が一度きりだと、スコアは不安定になる。
各項目を安定させたいならセット数を増やしたいが、増やすほど回答者は疲れる。項目が 30 も 40 もあれば負担は限界にぶつかるので、「本当に順位を知りたい項目」に絞ってから設計に入る。
MaxDiff でわかるのは相対順位で、「どれも要らない」かどうかは判定できない
MaxDiff のスコアは相対的な位置にすぎない。合計は一定で、ある項目が上がれば別が下がる。だから、首位の項目が「絶対に必要」だとは言えない。候補がどれも平凡なら、その一番は「ましなだけの一番」かもしれない。順位はわかるが、それが合格ラインの上か下かは、MaxDiff だけでは判定できない。
価格や機能を組み合わせた「商品まるごと」の選好なら、コンジョイント分析のほうが向く。MaxDiff は項目を単体で並べる手法で、組み合わせの中での価値は測らない。
優先順位は、上を選ぶだけでなく、下も名指して決まる
MaxDiff がふつうのアンケートと違うのは、「いちばん要らないもの」まで選ばせるところだ。この「切り捨てる一票」があるから、順位の下半分までくっきりする。
優先順位づけとは、何を選ぶかと同じだけ、何を後回しにするかを決める作業だ。MaxDiff のスコア表を開いたら、上位だけでなく下位も見てほしい。何を先にやり、何を今回は見送るのか。そこまで読んで、はじめて優先順位を決めたことになる。