市場調査
市場調査とは、ある市場の規模・成長性・構造・競合状況といった「市場そのものの輪郭」を測り、参入や投資の判断材料にする活動です。
近い言葉にマーケティングリサーチがある。実務ではほぼ同義で使われるが、狭く捉えれば違いははっきりする。マーケティングリサーチが顧客の心理や購買理由まで含む広い活動だとすれば、市場調査はそのうち「市場が、どれだけの大きさで、どこへ向かっているか」を測る部分を指す。心を読むのではなく、市場を測る。そう割り切ると、両者の違いがくっきりする。
たとえば、ある市場に入るかどうか
新しいカテゴリーへの参入を検討しているとする。
最初に知りたいのは、その市場が「いくらの大きさで、伸びているのか、しぼんでいるのか」だ。年間の販売金額はどのくらいか、過去 3 年で伸びているか、上位数社でシェアの何割を占めているか。この全体像が見えて初めて、入る価値があるか、入る余地があるかを話せる。逆に、既存市場の縮小を疑うなら、同じ指標を定点で追って推移を見る。
大まかな骨格
市場調査の骨格は、おおむねこうなる。
まず市場を定義する。どの製品・地域・期間までを「その市場」と数えるかを決める。次に、その枠の中で規模・成長・構造・シェアを推計する。このとき中心になるのは、まず既存の統計やレポートを使う二次データ=デスクリサーチだ。公的統計や業界資料で埋まる部分を先に潰し、足りないところだけ一次調査に回す。市場の大きさを測る作業は、最初から自分で集めるより、すでにある数字をつなぎ合わせる比率が高い。
どこで何を選ぶか
市場調査には選択軸がある。判断材料として二つ押さえておきたい。
ひとつは、二次データで足りるか、一次調査が要るか。すでに公的統計や業界レポートに数字が出ている市場なら、二次データを突き合わせるだけで輪郭は描ける。出典が古い、定義が自社の見たい市場とずれている、まだ誰も測っていない新領域だ——このときだけ、一次調査でその欠けた一片を埋める。
もうひとつは、規模推計をトップダウンで攻めるか、ボトムアップで積むか。全体の市場統計を起点に、地域や対象を絞り込んで自社の取り分まで降ろすのがトップダウン。既存市場の概算を素早く掴むのに向く。対象顧客の数×一人あたり単価のように、現場の数字を積み上げるのがボトムアップ。既存統計のない新カテゴリーや、根拠を問われる場面で強い。問いに応じて、両方で出して突き合わせると精度が上がる。
数字の大きさより、前提を疑う
市場規模の数字は、独り歩きしやすい。
同じ市場でも、どこまでを市場と定義したか・どの出典を使ったか・どんな推計方法を取ったかで、答えは何倍も動く。「市場は 1 兆円」という一文の裏には、必ず前提がある。前提を確かめずに数字だけ受け取ると、判断を誤る。二次データには鮮度と粒度の限界もつきまとう。去年の集計、国全体の粗い区分では、いま見たい市場の今を映せないことがある。
そして最後に、これがいちばん大事だ。市場が大きいことと、自社がそこを取れることは別である。規模は獲得可能性を保証しない。
市場調査は、「大きさ」を測り、「入れるか」を読む
市場調査は市場の大きさを測る行為だが、本当に効くのは数字の大きさそのものではない。その市場のどこに隙間があり、自社のどの角度なら入り込めるのか。規模の数字は、その問いを立てるための出発点にすぎない。測った大きさの内側にある「自社が取れる場所」まで見極められて、はじめて調査は判断につながるのだと思う。