本調査

本調査とは、事前のスクリーニングで条件に合う対象者を絞り込んだうえで、その人たちに実施する調査の本体のことです。

本調査を具体例で理解する

たとえば、新しい時短家電のニーズを調べたいとする。

いきなり全員に「この家電を買いたいか」と聞いても、料理をしない人や、すでに同種の製品を持っている人の回答が混ざってしまう。知りたいのは「週に数回は自炊する、20 代から 40 代の世帯」の本音なのに、それ以外の声に薄められてしまう。

そこでまず短い質問で「自炊の頻度」「年代」「世帯構成」を聞き、条件に合う人だけを判定する。これがスクリーニング調査だ。

その判定を通った人にだけ、設問数の多い詳しいアンケートを配る。価格の許容範囲、欲しい機能、購入のタイミングなどを測っていく。この後半が本調査である。

本調査の仕組み

調査はおおむね二段階で進む。

前半のスクリーニング調査では、回答者が対象条件に当てはまるかどうかを判定する。短い設問で、条件に合うかどうかを切り分けるための門になっている。

後半の本調査では、その門を通った人にだけ、本来知りたいことを詳しく尋ねる。満足度を測ったり、利用実態を数えたり、購入意向を推計したりと、分析の中心になるデータはここで集まる。クロス集計などで深く読み解くのも、基本的にこの本調査の回答に対してだ。

つまり本調査の設計は、スクリーニングで「誰を通したか」に強く依存する。条件をどう決めたかが、後で何を語れるかを先に決めてしまう。

本調査で考えること

本調査を設計するときは、たとえば次のような点をすり合わせる。

  • 設問数は適切か。詳しく聞きたいあまり長くなりすぎると、回答の質が落ちる
  • サンプルサイズは足りるか。クロス集計で年代別・利用頻度別に分けて見るなら、各グループに必要な人数を逆算しておく
  • スクリーニングの条件と、本調査で立てたい問いがずれていないか

スクリーニングで絞りすぎれば回答者が集まらず、緩すぎれば対象外の声が混ざる。本調査の良し悪しは、その手前の条件設計とセットで決まる。

本調査だけではわからないこと

本調査の数字は、スクリーニングで通した人たちの中での結果でしかない。

「自炊する 20 代から 40 代」に絞ったなら、その本調査で出た購入意向は、あくまでその層の話だ。日本全体の消費者がどう思っているか、という母集団の話に勝手に広げることはできない。

しかもスクリーニング調査に偏りがあれば、本調査はその偏りをそのまま引き継ぐ。たとえば回答者がネット調査の登録者に偏っていれば、その性質は本調査の結果にも残り続ける。市場調査の数字を読むときは、本調査の中身だけでなく、その手前で誰をどう選んだかまで含めて見る必要がある。

数字がきれいに見えても、どの母集団を代表しているのかは、本調査の表だけからは読み取れない。

本調査は、問いの答えではなく、問いの前提を映す

本調査は調査の主役だ。時間も費用も、いちばんかかるのはこの段階である。

ただ、その結果がどこまでを語れるかは、本調査が始まる前にほとんど決まっている。誰を通すかを決めた瞬間に、何を結論にできるかの範囲も決まっているからだ。

だから本調査の表を受け取ったとき、最初に確かめたいのは数字の大きさではない。

この数字は、いったい誰の中での数字なのか。

そこを問えるかどうかで、本調査は報告書を埋める作業から、意思決定に使える材料に変わる。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。