因子分析

因子分析とは、複数の観測項目に共通して影響する、直接は観測できない因子を、項目間の相関関係から推定する統計的な分析手法です。

因子分析を具体例で理解する

アンケートを作るとき、私たちは知りたいことを細かな項目に分ける。

たとえば、あるサービスの評価構造を知るために、利用者へ次の項目をリッカート尺度の 5 段階で評価してもらったとする。

  • 初めてでも操作方法がわかりやすい
  • 必要な機能を見つけやすい
  • 画面の表示が理解しやすい
  • 動作が安定している
  • 問い合わせへの対応が適切である
  • 問題が起きても安心して利用できる

調査票の上では、6 つの項目がきれいに並んでいる。それぞれ、サービス体験の異なる側面を捉えるために用意した項目である。

多くの利用者から回答を集めると、いくつかの項目が似た動きをすることがある。最初の 3 項目は互いに評価が連動し、後ろの 3 項目にも別のまとまりが見えてくる。

そこには「使いやすさ」や「利用時の安心感」のような、調査票には直接書かれていない共通因子が影響しているのかもしれない。

因子分析は、項目間の相関パターンを手がかりに、その背後にある共通因子を探る。

因子分析の仕組み

ここで説明するのは、あらかじめ因子構造を決めず、データから構造を探る「探索的因子分析」である。

探索的因子分析では、各項目と因子の結びつきの強さを「因子負荷量」で確認する。複数の項目が同じ因子に強く結びついていれば、その項目群に共通する意味を考える。

ただし、分析結果に「この因子は使いやすさです」と名前が表示されるわけではない。どの項目が強く結びついているかを確認し、調査目的や項目内容に照らして因子を解釈し、名前をつけるのは分析者である。

数字が示すのは、項目同士のつながりまでである。そのつながりを何と呼ぶかは、人が考えなければならない。

因子分析は何に使うのか

因子分析は、たとえば次のような目的で使われる。

  • 多数の評価項目に共通する構造を探る
  • 信頼感や不安など、直接は観測できない概念を検討する
  • 顧客が商品やブランドを評価する潜在的な軸を探る
  • 心理尺度や評価指標を検討する

項目を整理する場面でも使われるが、単に質問数を減らすための方法ではない。

一人ひとりの回答のばらつきを、どのような共通因子で説明できるのか。因子分析が扱うのは、その見えない構造である。

因子分析でわからないこと

因子分析で因子が見つかっても、それが唯一の正解とは限らない。

分析できるのは、調査票に入れた項目だけである。聞かなかったことは、あとから高度な分析をしても見えてこない。項目設計が不十分なら、知りたかった構造にはたどり着けない。

また、因子の数、抽出方法、回転方法などによって解が変わることがある。因子の命名にも分析者の解釈が入り、因子間や項目間の因果関係を証明するものでもない。

因子は、人の気持ちをきれいに分類した答えではない。評価構造を理解するための、ひとつの仮説として扱う必要がある。

主成分分析との違い

因子分析は、観測項目に共通して影響する潜在因子をモデル化する。一方、主成分分析は、観測項目が持つ情報を、少数の合成変数へ要約する。

似た表や数値が出ることもあるが、「観測できない共通因子を考える」のか、「観測した情報を効率よくまとめる」のかで目的が異なる。

因子分析は、質問票に書かれていないものを探す

調査票に書けるのは、目で見て回答できる項目である。

一方、「使いやすさ」や「安心感」のような概念は、それ自体を直接見ることができない。だから、個別の項目に対する回答を手がかりに、その背後にあるものを考える。

見える回答から、見えない因子を考える。

計算そのものはツールが引き受けてくれる。人に残るのは、何を測るために項目を用意し、得られた因子にどこまで意味を与えるか、という判断のほうだ。

因子に「使いやすさ」と名前をつけたら、その一語に責任を持てるところまで確かめる。そこまでやって、因子分析は評価構造の理解にようやく届く。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。