コンジョイント分析
コンジョイント分析とは、価格や容量といった複数の属性を組み合わせた選択肢を評価してもらい、その回答から属性ごと・水準ごとの好ましさ(部分効用)を推定する手法です。
コンジョイント分析が要るのは、一つずつ聞くとすべて「大事」になるから
新しいスマホの企画会議で、価格・容量・カメラ性能のどれを優先するかが決まらない。そこで購入検討者に、一つずつ重要度を聞いてみる。
「価格は大事ですか」「容量は」「カメラは」。返ってくるのは、たいてい全部「大事」だ。属性を一項目ずつリッカート尺度で聞くやり方は、この「全部大事」から抜け出せない。人は、何かを諦める場面に立たされて初めて、本当の優先順位を口にする。
そこでコンジョイント分析は、属性を組み合わせた選択肢を丸ごと見せる。
- A:8 万円 / 128GB / カメラ標準
- B:11 万円 / 256GB / カメラ高性能
どちらが良いか。この一問には、価格を取るか容量とカメラを取るかというトレードオフが畳み込まれている。組み合わせを変えて何度も選んでもらい、選び方を逆算すれば、「容量が 128GB から 256GB に増える価値」や「1 万円の値上げが与える痛み」を、別々の数字として取り出せる。
コンジョイント分析は、全体の評価を崩して水準ごとの「効き」を取り出す
回答者は、一台のスマホを「全体」としてまるごと良い・悪いと評価する。分析はその評価を「価格の効き+容量の効き+カメラの効き」の足し合わせとみなし、水準ごとに好ましさの数字を割り当てる。この数字が部分効用(part-worth)である。
つまりこれは、複数の変数から結果を読み解く多変量解析の一種だが、重要度を直接聞くのではなく、選んだ結果から逆算する点に芯がある。この骨格をマーケティングの道具として立てたのが Green と Rao で、1971 年だった。
混同されやすい MaxDiff は、項目単体の優先順位を測る方法で、属性と水準のトレードオフを取り出すコンジョイント分析とは狙いが違う。
いま実務で主流なのは、買う場面に近い「選択型」
型はいくつかあるが、よく使うのは二つ。
- フルプロファイル型:属性をすべて書いた一枚のカードを複数見せ、評価か順位づけをしてもらう。属性が少ないうちは素直に測れる。
- 選択型(choice-based conjoint):複数の選択肢を一組で見せ、「どれを買うか」を選ばせる。店頭やアプリで選ぶ場面に近く、いまの実務ではこの型が主流だ。
選ぶ基準は、回答者の負荷と、測りたい場面のリアルさだ。順位づけは属性が増えるとすぐ苦しくなるが、選ぶだけなら楽に答えられる。新製品の仕様や価格を詰めるコンセプトテストの設計なら、買う場面を再現できる選択型が向く。
コンジョイント分析で測れるのは、設計に入れた属性の仮想の選択だけ
便利だが、測れる範囲は決まっている。
第一に、部分効用が出るのは設計に入れた属性・水準だけだ。ブランドや保証を入れなければ、その効きはゼロと出るのではなく、そもそも数字にならない。何を競わせるかを決めた時点で、見える範囲も決まる。
第二に、回答者が選ぶのは仮想の選択肢だ。財布を開くわけではないので、申告された選好が実購買と食い違うことがある。とくに価格は、仮想だと痛みを軽く見積もられやすい。
第三に、属性を欲張るほど回答は荒れる。一度に多くを突きつけられると、全部を吟味できず、「価格だけ見て決める」手抜きに逃げる。属性を絞る設計は妥協ではなく、前提だ。
結果は、分析より先に「何を並べるか」で決まっている
部分効用の一覧は、ツールに任せれば出てくる。けれど、その数字が答えるのは、選択肢に並べた属性のことだけだ。並べなかった価値には、何も言わない。
だから、集計に入る前に一度だけ決めておきたい。この買い物で、顧客に天秤へかけてほしいのは、どの価値とどの価値なのか。
そこを選ぶことが、コンジョイント分析でいちばん頭を使う仕事である。