信頼区間
信頼区間とは、標本(サンプル)から計算した推定値をもとに、母集団の真の値がどのくらいの幅に収まりそうかを推計した範囲のことです。
信頼区間を具体例で理解する
ある商品の支持率を、全国から選んだ 1,000 人に聞いたとする。結果は 50% だった。
報告書には、よくこう書かれている。
「支持率 50%(95% 信頼区間 45〜55%)」
この「45〜55%」が信頼区間だ。
全員に聞いたわけではない以上、50% という数字はぴったり正しいとは限らない。別の 1,000 人に聞けば、48% かもしれないし、52% かもしれない。その揺れを見込んで、「真の支持率はだいたいこのあたりだろう」と幅で示したものが信頼区間である。
点ではなく、幅で答える。それが信頼区間の発想だ。
信頼区間が測るもの
信頼区間は、標本から母集団の値を推計するときの「精度の幅」を表す。
幅を決めるのは、主に標本のばらつきと標本サイズである。回答者の数が増えるほど推定は安定し、信頼区間は狭くなる。逆に回答者が少なければ、区間は広がる。区間が広いほど、その数字はまだ大ざっぱだということだ。
ここで、最も誤解されやすいのが「95%」の意味である。
正しくはこうだ。同じ調査手続きを何度も繰り返して、その都度 95% 信頼区間を作ると、そのうち約 95% が母集団の真の値を含む。95% は、区間を作る手続きの成績であって、いま手元にある一本の区間の中身についての確率ではない。
だから「真の値が 95% の確率でこの区間にある」という言い回しは、厳密には危うい。真の値はすでに一つに定まっていて、揺れているのは調査のたびに変わる区間のほうだ。専門家でも取り違えることが多い、と複数の研究が指摘している。
どこで誤読されるか
実務でつまずきやすい点が、もう一つある。二つのグループの信頼区間を見比べて、差があるかどうかを判定する場面だ。
区間が重ならなければ、差はおおむね有意とみてよい。しかし、区間が少し重なっていても、差が有意なことはある。区間の重なりだけを見て「差はない」と結論づけるのは、安全側に寄りすぎた読み方になる。差の有無をきちんと判定したいなら、統計的検定を行い、有意差があるかを確かめるのが筋だ。
信頼区間は値の幅を推計するもの、検定は差の有無を判定するもの。役割が違う。
信頼区間が保証しないこと
最も大事な限界は、信頼区間が誤差の一部分しか表していないことである。
信頼区間が前提にしているのは、母集団から偏りなく標本を選んだ(無作為抽出した)という条件だ。この条件が崩れていると、信頼区間はあてにならない。
たとえば回答しやすい人だけが答えた調査や、特定の層に偏ったパネルでは、推定値そのものがずれている。それでも信頼区間は計算できてしまう。けれど、その狭い区間は「ずれた中心の周りの幅」でしかない。
信頼区間は、偶然のばらつきは表現する。けれど、偏りは表現しない。狭い区間は精度の高さを意味するが、正しさを保証するわけではない。
信頼区間とは、数字に幅を取り戻す作法である
調査結果は、つい一つの数字で語られる。「支持率は 50% でした」と。
でも、その 50% は 1,000 人から見えた景色であって、世の中そのものではない。信頼区間は、その数字に「これくらいは揺れますよ」という幅を添え直してくれる。そして本当に問われるのは、その幅をどう読むか、さらに幅の外側に残る偏りまで想像できるかだと思う。
信頼区間とは、一点で言い切る誘惑にあらがい、わからなさの大きさごと相手に手渡すための作法である。