コンセプトテスト
コンセプトテストとは、まだ作っていない商品を言葉や絵で示し、発売前に買い手の反応(理解・魅力・買いたさ)を測る調査です。
飲料メーカーの開発会議。机に置かれるのは、たいてい一枚の紙だ。まだ世にない「果肉ごろごろの飲むヨーグルト」のパッケージ画と、味・価格を書いた数行。「これ、いけますか」。実物を作らないうちに、その問いへ答えようとするのがコンセプトテストだ。
コンセプトテストは、発売前に「伝わるか・惹かれるか・買いたいか」を確かめる
このテストが答えるのは、大きく三つ。狙いが伝わるか(理解)、心が動くか(魅力)、そのうえで買いたいか(購入意向)。買いたさは「ぜひ買いたい」から「まったく買いたくない」までの5 段階で測ることが多い。三つとも、生産ラインに乗せる前に読む。刺さらない訴求も高すぎる価格も、紙ならまだ書き直せる。
そして、誰に見せるかを外すと三つとも濁る。そのカテゴリを買う人へスクリーニングで絞り、そもそも飲まない人の「買わない」を商品の失点と数えない。
候補が一つならモナディック、選び抜くなら相対比較
見せ方は大きく二つあり、どちらを選ぶかで数字の意味が変わる。
一つはモナディック——回答者一人に一案だけ見せる。比較が入らないぶん粗探しが起きにくく、店頭で一つの商品に出会う現実の場面に近い。一案の水準を過去の類似案と照らし、出せるかを決めたいときに向く。
もう一つは相対比較——複数案を並べて選ばせる。差がくっきり出るので、社内に残った数案からどれを本命にするかを決める場面で強い。ただし、並べたからこそ開いた差でもあり、絶対値としては強めに出る。
迷ったら問いに戻る。「この一案を出せるか」ならモナディック、「どれを出すか」なら相対比較だ。
コンセプト文とビジュアルの作り込みで、数字は動く
同じ商品でも、見せる紙が変われば反応は変わる。説明が曖昧だと、回答者はめいめい自分の理想を思い浮かべ、意向は実態より高く出る。逆に煽り文句を盛れば、測るのは商品ではなく文章のうまさになる。
だから提示物には、何が新しいか(言葉)、いくらか(価格)、いつ誰が飲むか(利用シーン)を、中立に書き込む。とりわけ抜けやすいのが価格で、値段を伏せた「買いたい」は、タダなら欲しいに近い。組み立ての詳細はコンセプトテストの設計手順に譲るが、原則は一つ——回答者が別の何かを想像する余地を、なるべく残さないことだ。
買いたいという答えは、売れる証明ではない
最大の限界はここにある。コンセプトテストが測るのは提示物への意向であって、店頭で実際に手が伸びるかではない。
意向が高めに出るのには理由がある。調査回答の心理を扱った Tourangeau らが 2000 年に示したとおり、人は財布を開く現実の場面より仮想の場面で前向きに答えやすく、望ましい方向にも寄せやすい。しかも、Morwitz らが 2007 年に多様な調査データを検証したところ、購入意向が売上をどれだけ言い当てるかは、商品カテゴリや聞き方、時期によって大きく変わっていた。
だから意向の数字は、そのまま売上に読み替えない。高さそのものより、どの層が・何と比べて・いくらで買いたいと答えたかを見る。
コンセプトテストが測るのは売上の予測ではなく、この案を進める価値があるか
冒頭の一枚の紙に戻る。ここで確かめたいのは、狙った理由で・想定の価格で・既存の代わりに選ぶ人が、作る前にどれだけいるか。数字の高さに発売の許可をもらうのではなく、次にどこを直すかを一つ決めて会議を出る——それくらいの重さで使うのがちょうどいい。
意向のさらに先は、別の手の領分だ。価格の当たりを探るなら価格感度分析(PSM)、要素ごとの好みや優先順位を比べるならコンジョイント分析や MaxDiff。この一枚で見極めるのは、そこまでだ。