クラスタ分析

クラスタ分析とは、回答者や商品などの対象を、回答パターンの似ているもの同士でまとめ、いくつかのグループ(クラスタ)に分ける統計的な分析手法です。

クラスタ分析を具体例で理解する

ある会員サービスの調査で、利用者へ価格、デザイン、サポート、機能の豊富さといった項目の重視度を聞いたとする。

集めた回答を一人ずつ眺めても、全体像はつかめない。何百人もの好みがバラバラに並んでいるだけだ。

そこで、似た重視度を持つ人を寄せ集めてみる。すると「価格を最優先するグループ」「サポートの手厚さを求めるグループ」「機能の豊富さに反応するグループ」といった、いくつかのまとまりが浮かんでくることがある。

このまとまりが、クラスタである。

顧客をいくつかのタイプに分けて施策を考える「セグメンテーション」の現場で、その分け方の手がかりとしてよく使われる。

クラスタ分析の仕組み

クラスタ分析の出発点は、回答者同士がどれくらい「近い」かを測ることだ。各項目への回答を座標とみなし、その間の距離(ユークリッド距離など)が小さいほど似ている、と扱う。

まとめ方には大きく二種類ある。近いものから順にくっつけていき、枝分かれした図で全体を見る階層的な方法と、あらかじめ「いくつに分けるか」を決めてグループの中心を探していく非階層的な方法(k-means 法など)である。

どちらも、近さを手がかりに似たものを寄せる、という発想は変わらない。

クラスタ分析は何に使うのか

クラスタ分析が向いているのは、次のような場面だ。

  • 顧客や回答者を、いくつかのタイプに分けて施策を考えたいとき
  • 事前に「どう分けるか」の軸が決まっておらず、データから探りたいとき
  • 似た商品やブランドをグループにまとめて整理したいとき

性別や年代のように分け方が最初から決まっているなら、クロス集計で十分なことも多い。クラスタ分析を選ぶのは、分類の軸そのものをデータから見つけたいときである。

ただし、いくつのグループに分けるか(クラスタ数)は分析が自動で決めてくれるわけではない。どの変数で分けるか、その変数をどう揃えるか(標準化)も含めて、分析者の判断が結果を大きく左右する。

クラスタ分析でわからないこと

クラスタ分析には、唯一の「正解」がない。

クラスタ数を変えれば、グループの数も中身も変わる。分ける変数を一つ入れ替えるだけで、まったく違うまとまりが現れることもある。項目ごとに単位や幅が違えば、標準化のしかた次第で結果が動く。同じデータでも、設定を変えれば別の地図が描ける。

しかも、出てきたクラスタに「価格重視層」といった名前をつけるのは分析者であって、データそのものではない。因子分析と同じく、まとまりの意味づけには人の解釈が入る。

きれいに分かれたセグメントは、客観的に見つかった事実ではない。設定と解釈が作り出した、ひとつの見え方である。

分け方が残るなら、その地図は使える

クラスタ分析の図を見て、人はつい「こんなに見事に分かれている」と思い込む。境界がくっきりした図は、何かを発見した証拠のように見えるからだ。

でも、その境界線を引いたのは、分析者が選んだクラスタ数であり、変数であり、標準化のしかただ。

だから、図を信じる前に一度だけ問いたい。クラスタ数を変えてもこの分かれ方は残るのか。別の変数で分けても同じ人たちが集まるのか。

設定を揺らしても同じまとまりが残り、しかもそのまとまりが打つべき施策に結びつくとき、はじめてその分け方は信じるに足る。設定ひとつで消えてしまう境界なら、それはまだ地図になりきっていない、その日限りの見え方だ。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。