ブランドヘルス

ブランドヘルスとは、認知から推奨までのつながりを複数の指標で捉え、ブランドが今どんな状態にあるかを定点で測り続ける考え方です。ブランドヘルスチェックとも呼ばれます。

ブランドヘルスを具体例で理解する

コーヒーチェーンの担当者が「売上が伸び悩んでいる。広告を増やすべきか」と相談を受けたとする。

広告に飛びつく前に、もう一段ぶんの問いがある。お客さんはどの段階でつまずいているのか。名前すら知られていないのか。思い浮かべてもらえないのか。候補には入るが、よその店を選ばれているのか。

調べてみると、名前は十分に知られている。けれど「飲みたい店を一つ挙げて」と聞くと名前が出てこない。知られてはいるが、思い出してもらえていない。

ここまで分かれば、打ち手は「もっと知ってもらう広告」ではなく「飲みたくなる場面と結びつける訴求」に変わる。状態を段階で見て、どこが弱っているかを特定する。これがブランドヘルスである。

ブランドヘルスの仕組み

ブランドヘルスは、ひとつの数字ではなく段階の異なる指標を束ねて見る。入り口になるのは「知られているか」という認知で、これは細かく見ると二つに分かれる。名前を見せられれば分かる再認(助成想起)と、手がかりなしに自力で思い浮かべられる再生(純粋想起)だ。その先に、好ましいと感じる好意、人にすすめたいと思う推奨が続く。再認から推奨へ進むほど、ブランドとの結びつきは強くなる。こうした段階の連なりは David Aaker や Kevin Keller がブランド論として整理してきた。実務ではこれに NPS(推奨度の指標)や利用意向を加え、漏斗のように並べて測る。

肝心なのは、これを一度きりで終わらせないことだ。同じ設問・同じ対象条件で繰り返し測り、推移を見る。この継続測定がトラッキング調査であり、対極にある一回限りの調査がアドホック調査にあたる。定点で測るからこそ、上がった・下がったという変化に意味が生まれる。

ブランドヘルスは何を判断する材料になるのか

ブランドヘルスは、たとえば次のような問いに使える。

  • 弱っているのは認知(再認・再生)か、好意か、推奨か。漏斗のどの段階か
  • 競合と比べて、どの段階で差をつけられているか
  • 前回から下がった指標はどれで、何の出来事と重なっているか
  • 認知と推奨、どちらの段階に投資すべきか

見るべき指標は、いつでも全部ではない。市場に入った直後なら認知を、すでに知られているブランドなら好意や推奨を中心に読む。

注意したいのは、単一の指標だけで健康を語らないことだ。認知が高くても推奨が低ければ、知られているのに選ばれていない状態かもしれない。複数の段階を並べて初めて、どこが詰まっているかが見えてくる。

ブランドヘルスが教えてくれないこと

指標が動いたことと、その原因や売上との関係は、別の話である。

推奨度が上がっても、それが来期の売上を約束するわけではない。NPS のような指標がどこまで売上成長を予測できるかを調べた査読研究でも、予測力には限界があると報告されている。指標と売上の間には、景気や競合の動き、価格など多くの条件が挟まる。

施策との関係も同じだ。広告を打った月に認知が上がっても、その上昇が広告のおかげだと言い切ることはできない。同じ時期に別の出来事が重なっていたかもしれない。相関と因果は違う、という原則がここでも効く。

ブランドヘルスが教えてくれるのは、どこが弱っているかという場所であって、なぜ弱ったかという理由ではない。理由を確かめるには別の調査がいる。

ブランドヘルスは、ブランドの体温計である

体温計が一本で体調のすべてを説明しないように、どの指標も単独では健康を語れない。認知から推奨までを同じ条件で並べ、測り続けたとき、はじめてどの段階が冷え込んでいるかが見えてくる。

だから、次の調査で数字が動いたら、三つだけ確かめてほしい。動いたのはどの段階か。前回から何が変わったか。その変化をどの打ち手につなぐか。体温を測る習慣が次の一手を早くするように、ブランドヘルスも、測り続ける人の意思決定を少しずつ速く、確かにしていくと思う。

このページの著者 こんぺい

大手事業会社で商品企画に携わり、スタートアップではプロダクトマネージャーとして会社を立ち上げ、調査会社では立ち上げからリサーチオペレーションを築いてきました。事業をつくる現場でいつも大事だと感じるのは、作り手と使い手の想いが重なる部分をどう大きくするか、そして、いいものを届け続けるお金のめぐりをどうつくるか。その重なりを広げる力が、リサーチにはある。そう信じて、このメディアをつくっています。