アフターコーディング
アフターコーディングとは、アンケートの自由回答を調査の後で読み、似た内容ごとに分類して、集計できるコード(番号)に変換する作業です。
アフターコーディングを具体例で理解する
新サービスのアンケートに、こんな設問を入れたとする。
「このサービスを選んだ理由を、自由にお書きください」
返ってきたのは、1,000 人ぶんのバラバラな文章だ。「価格が手頃だった」「友人にすすめられて」「他に選択肢がなかった」——そのままでは、何人が価格を理由に挙げたのかさえ数えられない。
そこで回答を読み、「価格」「口コミ」「機能」といった枠を作り、各回答に当てはまる番号を振っていく。すると「価格」と答えた人が 40%、と数えられる。この作業が、アフターコーディングである。
アフターコーディングの仕組み
やることは、大きく 3 つだ。
まず自由回答を読み、どんな意見が出ているかを把握する。次に分類の枠を作る。この枠の一覧をコードフレーム(分類の設計図)と呼び、各カテゴリにコード番号を割り当てる。最後に、一件ずつ当てはまるコードを振っていく。
コードフレームさえできれば、あとは集計と同じように扱える。「数えられる形」に変えること、それがこの作業の核心だ。
アフターコーディングは何に使うのか
アフターコーディングが必要になるのは、主に次のような場面だ。
- 自由回答を、量的に集計して割合で示したいとき
- 選択肢を用意せず、回答者の言葉そのものを集めたかったとき
- 想定していなかった理由や不満が、どれくらいの規模であるかを知りたいとき
対になる考え方が、プリコードである。調査の前に選択肢を決めておく方式だ。聞きたいことが事前にはっきりしているならプリコードが速く、ブレも少ない。何が出てくるか分からないから自由に書いてもらったなら、後からアフターコーディングで整理することになる。
分かれ目は、コードフレームを誰がどう作るかにもある。一人で枠を決めれば速いが、偏る。重要な調査では、複数のコーダーが同じ基準で別々に分類し、ズレを突き合わせて基準をそろえる。このズレの少なさをコーダー間信頼性(inter-coder reliability)と呼び、結果を「客観的」と言えるかの目安になる。
単純集計やクロス集計に渡す手前の下ごしらえ、と考えるとつかみやすい。
アフターコーディングでわからないこと
注意したいのは、コードが付いた瞬間、それが確かな事実に見えてしまうことだ。
同じ回答でも、分類する人が違えば違うコードが付く。「コスパが良い」を「価格」に入れるか「機能」に入れるかは、コーダーの判断で揺れる。だから複数人で突き合わせる工夫がいるのであって、一人で付けた番号は、その人の解釈にすぎない。
枠の作り方そのものでも結論は変わる。カテゴリを粗くまとめれば違いは消え、細かく割れば母数が小さくなって不安定になる。最初の設計が、最後の数字を決めている。
そして何より、文章を番号に置き換えた時点で、その人の言い回しや迷い、行間のニュアンスは落ちる。「まあ価格、かな」と「とにかく安かった」は、同じ「価格」コードに丸められる。
集計結果は、回答そのものではない。回答について誰かが下した分類の集計である。
アフターコーディングとは、言葉を数に変える橋である
自由回答は、本来いちばん豊かなデータだ。回答者が自分の言葉で書いてくれた、生のままの声がそこにある。
ただ、声のままでは集計表に載らない。だから私たちは、それを数に変える。
その変換は、何かを得て、何かを捨てる作業でもある。割合という見通しの良さを得るかわりに、一人ひとりの言い回しを手放す。どんな枠で切り分けたか次第で、手放すものの大きさも変わる。
アフターコーディングとは、言葉を数に変えるための橋である。
渡るときに何を持っていき、何を置いてきたのかは、覚えておきたい。